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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

ベトナム・アフガン・イラク等で戦争犯罪の張本人アメリカが、今プーチンの戦争犯罪を非難できるのか

2022年04月30日 | 平和憲法
 ◆ チョムスキーの心頭を突く発言
   動画「ウクライナ戦争とアメリカの巨大な欺瞞」を見る

牧子嘉丸 (レイバーネット日本会員)


 この動画を見てすぐに思い出したのは、ロシア映画の話題作「親愛なる同志たちへ」である。
 これは1962年スターリン亡き後の冷戦下のソ連で起こった「ノボチェルカッスク事件」を女性の視点で描いた作品である。ウクライナに近いロシア南部ノボチェルカッスクの機関車工場で発生した労働者のストライキに端を発したこの弾圧事件は、ソ連崩壊までの30年間隠蔽され続けてきた。
 84歳のアンドレイ・コンチャフスキー監督はソ連邦最大の労働者蜂起の悲劇を掘り起こして、歴史の真実と祖国への愛憎を映像で表現し記録した。
 私がチョムスキーの動画を見て、この作品を思いうかべたのは、何より自国の歴史に真摯に向き合う姿勢が共通しているからだ。
 チョムスキーはロシアのウクライナ侵攻を主権国家への重大な侵犯・侵略であるという厳しい批判を前提にして、同時に西側やNATO、またアメリカにそれを糾弾する資格・権利があるのかと問う。
 特に自国アメリカが、ベトナム・ニカラグア・アフガン・イラク等に侵攻し、独立国家の主権を踏みにじり、政権を転覆させるためにいかに多くの市民を戦闘に巻き込んできたかを振り返る。
 その具体的な指摘に、いまさらながらアメリカの戦争犯罪の歴史に慄然とする。
 その戦争犯罪の張本人が、今プーチンの戦争犯罪を非難できるのか、その資格があるのかと厳しく自国の指導者に問いかけている。
 人権問題でも環境問題でも核禁止条約でも、必ず自分たちは免れる特権条項を設けて、他国には厳しく、自国には大甘な対外政策にも言及し、その意外な事実にも驚かされる。
 今回の侵攻を受けて、「こんなことが21世紀の現代に起こるとは」という発言を何度も耳にした。
 たしかにその通りなのだが、イラク・シリア・パレスチナ・ミャンマーと戦火が止んだことはないのも事実だった。
 そのときは傍観的な姿勢で報道しながら、今の反ロシアの大合唱は人々の思考・懐疑をストップさせ、歴史の真実追求を麻痺させている。
 橋下徹や東国原英夫らは論外だが、ロシア・スラブ研究家という女性教授らの発言も現象面だけの説明であり、頻繁にテレビ出演する元自衛隊出身の解説者も要するに軍備の拡張・増強へと向けるように視聴者の不安を煽っている。
 ロシアの現在を見て、かつての自国の暴虐・弾圧・侵略の歴史を反省しようなどというコメントはもちろん、ましてアメリカの戦争犯罪の歴史を教訓にしようなどという意見は聞いたこともない。
 池上彰は「ロシアはウクライナを今の朝鮮半島のように南北分断化しようとしているのでは」と物知りセンセイらしく発言していたが、その分断化の原因が日本帝国主義の植民地支配にあったなどとは口が裂けても言わない。
 こんな程度の歴史観で世界情勢の解説を得々とやっているのだ。

 芸能人のコメント、大学教授の解説、自衛官出身者の軍事評論と毎日垂れ流される情報のなかで、一元的な善悪論を身に着けていないだろうか。
 そんな疑問をかすかに感じながらも日常に流されているなかで、このチョムスキーの発言ははっと心頭を突くものがある。
 無明のなかの明かりであり、混迷のなかのしるべでもある。
 最初1時間はちょっと長いなあと正直思ったのだが、インタビュアーとの明確・明晰なやりとりに時を忘れて聞き入ったのである。
 すぐれた歴史的洞察と公正な知的探求心、そして何によりも旺盛な批判的精神にあふれた内容については私の下手な要約より、ぜひお聞きください。
 翻訳の労をとってくださった方や配信していただいた方にお礼申し上げます。(レイバーネット会員)
『レイバーネット日本』(2022-04-26)
http://www.labornetjp.org/news/2022/0426makiko
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