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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

《連載》卒業式刑事弾圧事件判決文(2)

2008年06月16日 | 板橋高校卒業式
 ◎ 判決文(2) P6~P13

「定天と星空」 《撮影:佐久間市太郎(北海道白糠定、札幌南定、数学科教員)》


 (4) この田中の供述内容は、次の理由により、その信用性は高いというべきである。
 ア 供述内容の具体性、自然性

 (ア) 田中は、被告人によるコピー配布の状況、それに対する田中の制止の態様、被告人が保護者関前に移動して呼びかけを始めた経緯、それに対する田中の対応等について、具体的に供述している。
 (イ) また、鯨岡廣隆指導主事が録音したICレコーダーからうかがわれる時間的経過に照らすと、田中は被告人がコピーを配布している真最中に体育館に到着したものと見て何ら差し支えなく、そうだとすれば、田中が、体育館に到着後、直ちに、直ちに被告人のコピー配布の制止に及んだのは、極めて自然であるというべきである
 すなわち、鯨岡が来賓らの体育館入場に気付いたのは、ICレコーダーのカウンターで7分14秒の時点(以下、[7:14]などと表示する。)であり、そのころ、北爪の先導で来賓が体育館に入場したと認められるところ、校長室から体育館まで徒歩で3分程度と認められること(北爪の原審公判供述・記録6冊243丁、250丁)、田中が校長室を出て間もない時点から小走りで体育館に駆け付けたことなどの事情に照らし、田中が体育館に到着したのは、およそその1分半程度前([5:44]ころ)と推認して差し支えないであろう

(実況見分調書(原審甲2)添付の見取図1(記録5冊736丁)により、同見取図8の体育館の測定結果を基準に、校長室から体育館まで及び校長室から田中の述べる佐々木と遭遇した位置までの各距離を測ると、前者は約150メートル、後者は約40メートルとなる。これを前提に検討すると、まず、北爪は、校長室から体育館まで約3分を要した旨供述しているところ、校長室から体育館までの距離は上記のとおり約150メートルなのであるから、北爪らは、この間を★時速3キロメートル(秒速約0.833メートル)で進んだことになる。この速度は、さほど広くない廊下や段差もある渡り廊下(同添付の写真3,29ないし33参照)を、複数の来賓を案内して進んだ速度として不自然とはいえないであろう。次に、田中は、佐々木と遭遇するまで北爪らと一緒に歩いていたのであるから、この間の距離約40メートルの歩行速度は時速約3キロメートルと考えてそう不正確でないであろう。田中がその後の約110メートルをどの程度の速度で進行したかは明確でないが、「早足」「急ぎ足」でなく「小走り」であったというのであるから(なお、田中が小走りで体育館に向かっていたのは、鶴川によっても目撃されている(同人の原審公判供述・記録7冊・681丁)。)、今これを★時速約9キロメートル(秒速2.499メートル)と仮定すると(ちなみに、「図解交通資料集」(交通実務研究会編集 発行元立花書房)全訂板18頁では、普通人が小走りした場合の100メートルの所要時間は35ないし40秒位(時速8.5ないし10キロメートル位)とされている。)、田中は校長室を出発して約92秒(前者の所要時間約48秒と後者の所要時間約44秒の合計)で体育館に到着した計算となる。そうすると、正確な資料に基づいていないので、あくまでおおよその数値として理解しなければならないが、田中の体育館到着時刻と北爪らのそれとの間には、1分半程度の差があったことになるのである。)。一方、鯨岡の供述(その信用性に特に疑いはない。)によれば、鯨岡が指定された教職員席の一番後ろの座席(体育館右側の壁際で前方の保護者席のの中程の右横に位置する。記録6冊108丁の図面Aの位置)に座った後、[2:42]ころ「卒業生の席と保護者席の間の通路のちょうど真ん中辺り」、すなわち、前方の保護者席中央辺りで被告人がコピーを保護者に配布していたこと(記録6冊18丁)が認められ、その後、鯨岡は、「すぐそばの保護者席の空席にもコピーが配られたので、一緒にいた後藤指導主事がすぐそれを手に取って見ている」(同19丁)ところ、被告人が鯨岡のすぐそばの保護者席、すなわち、前方の保護者席の右端の中程辺りにコピーを配布したのはICレコーダーに鯨岡又は後藤の「1枚もらって」との発言が現れる[4:42]の直前ころ推認できる。そして、被告人が保護者席前方で保護者に対する呼びかけを始めたのは[8:02]ころ認めるべき(ICレコーダーによると、被告人の呼びかけ内容が聴き取れるのは[8:07]ころに至ってからであるが(ICレコーダー聴取結果報告書・原審弁107・記録5冊763丁)、それ以前の[8:02]ころから、内容は聴き取れないものの、被告人の発言する声が聞こえる。)であり、かつ、被告人は、まず前方の保護者席に最左翼のブロック(なお、保護者席は、前方、後方とも、中央通路を挟んで、左右に2ブロックずつある。)から最右翼のブロックに向かってコピーを配布し(その旨の被告人の原審公判記述(記録8冊967丁)については、その信用性を否定すべき理由は特に見出せない。)、次いで後方の保護者席に移ってコピーを配布し、そのまま(被告人も原審公判でこのことを自認する(記録8冊970丁)。)保護者席前方に移動して呼びかけを始めたと認めることができるところ、以上の事実を関係を合わせて考えると、鯨岡のすぐそばの保護者席にコピーが配布されたころ([4:42]の直前ころ)というのは、前方の保護者席にコピーを大方配布してしまったころであり、それから1分くらい経過した、田中が体育館に到着したと推認できる[5:44]ころ(被告人が保護者席前方で呼びかけを始める2分18秒前ころ)というのは、被告人が後方の保護者席でのコピー配布を行っている真最中であったと見て差し支えないというべきである(なお、被告人がコピー配布しているのを発見して校長に室に急ぎ向かい、その途中で体育館に急ぎ向かう田中に会った佐藤が原審公判で供述する。同人が被告人のコピー配布行為を発見した時点における被告人の位置(記録8冊882丁)からすると、既に同時点では、被告人は後方の保護者席へのコピー配布を始めていたとうかがえる。同人は、[4:42]の直前ころよりも少し後の被告人の配布行為を目撃して校長室に急ぎ向かったものと考えられる。)。
 そして、そうだとすれば、在職当時から都教委の方針に反対の立場を採ってきた被告人が卒業式で何かやる魂胆があるのかなと心配していたところに、被告人が会場でビラをまいているとの知らせを受け、10.23通達の実施に積極的な土屋敬之都議会議員や都教委の指導主事を含む来賓に先立って体育館に駆けつけた田中とすれば、被告人が、国歌斉唱時に起立を求めることとした本件実施要綱に従って行われる予定の本件卒業式を妨害する行為をしているではないかと考え、被告人によるコピー配布を直ちに制止するという行動に出ることは極めて自然である。また、その後、卒業式開式の約20分前という状況を合わせ考慮すれば、会場にいる保護者等への配慮と、被告人を刺激しないために、小声で制止したというのも、また、極めて自然である

 イ 他の証拠との符合
 (ア) 北爪供述との符合
 北爪は、原審公判で、来賓を案内して体育館に入場した際、被告人と田中が保護者席の中央通路上に一緒にいるところを目撃した旨供述する(記録6冊250丁)ところ、この供述内容は、北爪の捜査段階の供述(平成16年3月26日付け員面調書・当審弁書139・記録書証4冊998丁)から一貫しておりその信用性に疑いはない。原判決も指摘するとおり、田中供述は、この信用性に疑いのない北爪供述とよく符合している。
 (イ) 佐藤供述との符合
 佐藤は、原審公判で、田中と共に体育館に戻ると、田中は、中央通路でコピーを配布している被告人のところへ向かって行き、「何をしているんですか、止めてください」というようなことを言って制止したが、被告人は従う様子はなく、その後、田中は被告人にくっついて保護者席の前の方に移動し、被告人が保護者に対し話を始めた際にも、田中は、「止めてください」というような様子で制止していた旨供述する(記録8冊883丁)ところ、この供述も、捜査段階の供述(同年4月30日付け員面調書・当審弁書143・記録書証4冊1037丁、10月29日付け検面調書・当審弁書145・同1064丁)から一貫しておりその信用性に疑いはない。田中供述は、やはり原判決が指摘するとおり、この信用性に疑いのない佐藤供述ともよく符合している。

 ウ 供述の一貫性
 さらに、田中の供述内容は、実況見分時における指示説明内容(同年3月26日実施・原審甲・記録5冊728丁)、員面調書(同日付け・当審弁書140・記録書証4冊1012丁)、検面調書(同年10月8日付け・当審弁書144・同1045丁)を通じて、「まず左側後ろの保護者席で、次いで右側後ろの保護者席で被告人のコピー配布を制止し、その後も被告人に付いて保護者席前方へ移動し、被告人による呼びかけの当初から被告人のそばにおり、呼びかけの最後に大声で制止した」という根幹部分で基本的に一貫している。なお、実況見分時に「呼びかけを制止した際、被告人が手に何かを持っていた」と指示説明した点について、原審公判では、そのような事実はなく、その指示説明は勘違いであった旨供述しており、供述内容に変遷がみられるが、その直前に被告人がコピーを配布するのを目撃し、制止していた田中が、呼びかけ時にも被告人は手に何かを持っていたと勘違いすることも不自然ではないと考えられるのであるから、供述の変遷に関する田中の説明に疑問はなく、少なくとも、この点についての勘違いが、制止行動の時期や状況に関する供述部分の信用性に影響を与えるものではない(なお、TBS報道特集写真52葉(原審弁96)中29番の写真(記録3冊118丁)には、保護者席前方で被告人が田中及び北爪から呼びかけを制止されている場面が写っているが、これによれば、被告人は手に何も持っていないことが明らかである。ちなみに、被告人は、原審公判で、コピー配布中に用意したコピーが無くなり、後方の保護者席の一部にはコピーが配布できなかった旨述べている(記録8冊970丁)。)。

 エ 田中供述の信用性の結論
 以上と同旨の理由により、制止行為に関する田中供述の信用性を肯定した原判決に、誤りはない。
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