☆ 屋久島事故から2ヶ月
昨年11月29日に鹿児島県・屋久島沖で墜落したオスプレイ(米空軍CV22)。
同機は横田基地所属で、岩国基地を経由し、沖縄・嘉手納基地に向かう途中で墜落事故を起こした。
事故原因はいまだ不明であるが、「エンジンから火を噴いていた」「左右のバランスを崩して墜落」という目撃情報から、なんらかのエンジントラブルで制御を失ったことは明らかだ。
米軍は事故から一週間後の12月6日、「全世界でオスプレイの飛行停止」という初めての措置をとった。飛行停止措置は現在も続いている。
米軍が使うオスプレイは、海兵隊約400機、空軍51機、海軍27機の計480機。自衛隊も保有14機の飛行を停止し、世界500機のすぺてのオスプレイが停止したことになる。
☆ 2年で20名の犠牲者
オスプレイは試作段階からこれまで墜落事故で65人の乗組員の命をうばった(23/12/6『赤旗』に加算)。
特に2022・23年は、屋久島事故も含めて2機ずつ墜落し、計20人の搭乗員が死亡している。
米軍は23年7月にクラッチの構造的欠陥を初めて認めた。しかし「適切な部品交換で事故の99%は防げる」と豪語して、飛行をつづけた。
防衛省はこの米軍報告書を受けて、翌8月「部品交換などの措置により極めて安全な水準が保たれており、飛行の安全に問題がないと評価する」と公式にプレスリリースしている。
「安全だ」を連呼する米軍、「米軍が安全というなら安全だ」という防衛省。その発表直後、8月にオーストラリアで、11月に屋久島でオスプレイは墜落した。米日両政府の事故の責任は免れ得ない。
☆ 声をあげる事故遺族
屋久島事故を受けての米国の対応は、明らかにこれまでとは違うものだ。12月21日、米議会の委員会が国防省に「オスプレイの安全性と性能についての懸念」を表明し、情報の開示を求めた。
前述のとおり、中東などの前線に配備された機体も含めて全機停止を決定したことも極めて異例だ。
これらの米国内の対応の変化の背景には、事故遺族からの突き上げが関係している。
ジエイコブ・ガリバー軍曹は、2人の幼い子供を残して屋久島事故で命を失った。ガリバー軍曹の遺族は、米新聞の取材に、「あのいまいましい飛行機で、あと何人の軍人が死ななければならないのか」と怒りを表明している。
米軍はこれまで同機の墜落事故の多くを「操縦ミス」と処理してきた。最も古い記録では、2000年の試作機の事故(19人死亡)を海兵隊が「パイロットの操縦ミス」と認定した。
この認定に対しては、パイロットの遺族が16年かけて名誉を回復し、国防省の謝罪を勝ち取った。
このときは事故当時の国防長官チェイニーが自ら、「オスプレイの計画キャンセルを恐れ、語ることができない死者をスケーブゴートにした」と反省した。
また22年のカリフォルニアの事故においても、米軍は報告書で「パイロットの責任はない」と明記するに至った。
遺族や軍内部からの突き上げで、「操縦ミス」のせいにすることが米国でも不可能になっていることは大きな変化といえるだろう。
☆ 自衛隊内からも異論
事故、点検、飛行停止があいつぐオスプレイに対し、軍関係者の意見も変化してきている。
23年12月26日「東京新聞」では、元陸自航空科の魚住真由美がこう語った。
「整備でこれだけの時間、機体が使えないのはロスが大きい。現場から望まれた機体ではない。安全性や運用面から『オスプレイはいらない』という声が現役隊員からも開かれる。米国に買わされたのが実態だろう。」
オスプレイ肯定派の理屈は、「長い航続距離」「高速」能力を生かしたヘリ以上の輸送能力だとされてきた。事故率も、基準を途中で変えてまで低くみせかけてきた。
だが、前記記事が述べているように、こんなにひんぱんに一斉点検や整備が必要では、自衛官からだって「オスプレイいらない」の声が上がるだろう。
昨年10月29日に習志野で行われた千葉県のオスプレイ反対デモに参加したが、「自衛官の命を守るためにもオスプレイいらない」というシュプレヒコールが上がっていた。デモに自衛官の安全まで心配されているのが、現在のオスプレイなのだ。
☆ 立川市なども要請
立川駐屯地では、昨年3度の陸自オスプレイ着陸訓練が行われたばかり。
訓練は昨年4月を最後に阻止しているが、それでもこれだけ危険な軍用機の訓練が住宅地上空で行われてきたかと思うと、改めてゾっとする。
立川市など基地周辺8市でつくる自治体連絡会は、屋久島事故の翌日、防衛省に対して要請を行った。
立川市のWEBには、北関東防衛周長に酒井市長が要請書を手渡す写真が掲載されている。一昨年来オスプレイをめぐっては、市と防衛省の間で何度も要請が交わされているが、市長自ら手渡したのは初めてではないか。
要請では、立川基地への3度の飛来、昨年8月の静岡での陸自機不時着事案にも触れ、「米軍の再発防止策を受けた上での自衛隊の対応策を明らかにすること」を求めている。
ストレートに訓練停止要求を出さないことにはもどかしさもあるが、要請の文面が徐々に批判的になっていることは注目に値する。
オスプレイにとどめを刺す最大のチャンスになにができるか、共に考えたい。次号では、沖縄や自衛隊配備予定地の佐賀の動きを紹介する。
『立川テント村通信 522号』(2024年2月1日)






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