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銀行占拠。

2010-11-04 21:28:18 | 書籍。

・銀行占拠  木宮 条太郎(幻冬舎文庫)

金融機関で15年間勤務し、金融危機をも体験した著者が描く傑作小説。舞台は邦和信託銀行神田支店。営業時間になっても開かないシャッター、店舗内に立て籠もったのは当行の社員だった。当リスク危機状態を安易に考えていた上層部に、立て籠もり犯から一通のメールが届く。「神田支店は占拠された。宣言する。これはストライキだ」。邦和信託の恥部が詰まったデータで経営陣に揺さぶりをかける占拠犯は交渉役として、六年前の金融危機で袂を分かったかつての同期を指名した―。
さすが、かつて金融機関に勤務していただけあって、信託銀行内におけるエグイ部分を赤裸々に描き出し、クダラナイ慣習模様や、不条理で無意味な規則を鋭く突く。どんな業界の企業内でも存在しているだろう人間関係模様や、微妙な上司・同期・部下の繋がり。常々“他人に興味を持たずして生きていければ、なんと楽に生きられることであろう”と考える。しかし、それはなんとも淋しいこと。“人に興味を持ち、人を愛し、人の為に生きる”。だから苦悩は絶えない。それでいいではないか。他人あっての自分の苦悩と、他人あっての自分の歓び。他人に興味を持ち続けた果てに待っているものは何。そんなことを考えさせられる、人間関係模様が描かれているのも当作品の醍醐味。犯人からのメール内で書かれているメッセージは素晴らしく“金融機関”の体質を暴き出していて面白い。全体のストーリーとしては、少しエンターテイメント性が交じって現実離れしているところがあるが、要所要所の部分は鋭く“現実”を突いた、とっても読み応えのある作品となっている。

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