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閉鎖病棟

2008-06-27 23:05:42 | 書籍。
・閉鎖病棟 帚木蓬生 (新潮文庫)

私たちは他人をどのような形で特定しているだろうか―。
親しい友人なら「鈴木君」「佐藤さん」という個人特定であろう。だが、その鈴木君が所属しているクラブ部員になれば「サッカー部の人」、その人が留学先で出会った人は「アメリカ人」。一般的に、自分から遠い存在の人ほど漠然とした広範的グループ名で特定するようになる。そして、そのグループのイメージが本人の人格のように看做されるようになっていく。
本書『閉鎖病棟』に登場する精神病患者たちは、その一例になろう。各々が個性を持ち、考えも異なり、一人の人間たちであるにもかかわらず、彼らは「精神病者」の名の下にひと括りにされ、その中で彼等が「個人としての存在」として認められることはない。それが―、
「ここは開放病棟であっても、その実、社会からは拒絶された閉鎖病棟なのだ。(259ページ)」で表れていると思う。
精神病患者であるという理由だけで、嫌い避け、そして危険人物であると決め付ける―、そこに患者本人の個性は完全に無視されている。
しかし、当作品では精神科病棟で生活する人たちの個性がありありと描かれている。「生きる」ために、お互い励まし合い、助け合い、時として他人のために自分を犠牲にまでもする彼等の姿に涙する。感動、感動、感動、感動を加速させて涙のクライマックスへ―。

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