突然、病棟看護師から電話が掛かってきた。
「奥様がトイレへ行く途中で転倒して、頭を打ったようです。すぐ来てください。
今のところ意識はしっかりしていますが。膨れてきているので冷やしています」
冷静に冷静に・・・と気持ちを落ちつかせ、なぜか干していた布団と洗濯物を取り入れ、娘にも知らせて、深呼吸して出かけた。
最悪のことが脳裏をかすめる。道路がいつもより渋滞しているように感じた。
一足先に着いていた娘に安堵の表情が見えた。
妻は頭部をアイスノンで冷やしながら眠っていた。
呼びかけると返事をする。朦朧とながら会話もでき少し安心した。
「倒れたときのことを覚えていないのよ」と言う。
後頭部に大きなタンコブが出来ている。脳内出血ではなかったようだ。
だが予断は出来ないとのこと。
準無菌室にはトイレが無い。水洗式のポータブルトイレを備えているが、妻は看護師さんに事後処理してもらうことに気を使って、いつも廊下を通り病棟のトイレまで行っていた。
やめるようにと何度も言ってきたが、今日もよろける足取りで歩いていたらしい。
運よく近くに看護師さんがいてくれたので良かった。
弱った足だけでなく、立ちくらみで意識も薄かったのかもしれない。
例によってスイカとメロンとプチトマトの夕食も摂れた。あ~よかった。
肝を冷やしたが、とりあえずホッとしたところ。