日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(138)「括弧・管到(scope)」について。

2019-01-19 18:19:38 | 訓読
(01)
① 君子不以其所以養人者害人=
① 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
① 君子{[其〔(人)養〕所-以者]以(人)害}不=
① 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所-以の者を]以て(人を)害せ}ず=
① 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
従って、
(01)により、
(02)
① 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}。
に於いて、
① 不は、{以其所以養人者害人}に掛かってゐる
然るに、
(03)
「不(否定詞)」は、論理演算子である。
然るに、
(04)
括弧」は、論理演算子のスコープ(scope)を明示する働きを持つ。スコープは、論理演算子の働きが及ぶ「範囲」のことをいう(産業図書、数理言語学辞典、2013年、四七頁:命題論理、今仁生美)。
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
① 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}。
に於ける、
①    { }
といふ「括弧」は、「スコープ(scope)」を明示してゐる。
然るに、
(06)
管到とは、ある語句がそのあとのどの漢字までかかっているか、という範囲のことである(加藤徹、白文攻略 漢文ひとり学び、2013年、143頁)。
従って、
(05)(06)により、
(07)
① 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}。
に於ける、
①    { [ 〔 ( ) 〕 ]( ) }
といふ「括弧」は、「論理学」でいふ「スコープ」、「漢文訓読」でいふ「管到」を表してゐる。
然るに、
(08)
管到とは、ある語句がそのあとのどの漢字までかかっているか、という範囲のことである。白文の読解では、それぞれの漢字の意味品詞を自分で考え、その漢字が後ろのどこまでかかっているか、考えなければならない(加藤徹、白文攻略 漢文ひとり学び、2013年、143頁)。
従って、
(07)(08)により、
(09)
① 君子不以其所以養人者害人。
といふ「漢文」に於ける、
① 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}。
といふ「管到」が分かる。といふことは、
① 君子不以其所以養人者害人。
といふ「漢文」に於ける、「それぞれの漢字の意味と、それらの漢字の意味が、どの漢字にまで及んでゐるのか」が分かる。といふことに、他ならない。
従って、
(09)により、
(10)
① 君子不以其所以養人者害人。
といふ「漢文」に於ける、
① 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}。
といふ「管到」が分かる。といふことは、
① 君子不以其所以養人者害人。
といふ「漢文」の「意味」が分かる。といふことに、他ならない。
然るに、
(11)
② Being able to read KANBUN is exciting for me=
② Being{able[to〔read(KANBUN)〕]}is[exciting〔for(me)〕]⇒
②{[〔(KANBUN)read〕to]able} Being[〔(me)for〕exciting]is=
②{[〔(漢文を)読む〕ことが]出来るよう}になることは[〔(私)にとって〕エキサイティング]である。
従って、
(10)(11)により、
(12)
例へば、
② Being able to read KANBUN is exciting for me.
といふ「英文」に於ける、
② Being{able[to〔read(KANBUN)〕]}is[exciting〔for(me)〕].
といふ「管到」が分かる。といふことは、
② Being able to read KANBUN is exciting for me.
といふ「英文」の「意味」が分かる。といふことに、他ならない。
然るに、
(13)
日本人ならば、かなで書いてある『源氏物語』を誰でも読むことはできる。しかし、古語を学習していなければ、意味がわかることができないのと同じである。中国人でも古典を音読したからといっても内容は理解できないのである。だから、中国語読みだけで古典を研究し、行き詰まっている人の話も聞いている。それなのに、中国文学家の某氏は漢文訓読を口をきわめて排斥し、「漢文訓読法の最大の弱点は、意味がわからないと読めないことだと」と言っている(原田種臣、私の漢文講義、1995年、25頁)。
然るに、
(14)
例へば、
① 楚人有 鬻盾與矛者。
② 譽之曰、吾盾之堅、莫能陷也。
③ 又譽其矛曰、吾矛之利、於物無不陷也。
④ 或曰、以子之矛、陷子之盾、何如。
⑤ 其人弗能應也。
といふ「漢文」を、
① 楚人に盾與矛とを鬻ぐ者有り。
② 之を譽めて曰はく、吾が盾之堅きこと、能く陷す莫き也。と。
③ 又た其の矛を譽めて曰はく、吾が矛之利なること、物に於いて陷さ不る無き也。と。
④ 或ひと曰はく、子之矛を以て、子之盾を陷さば何如。と。
⑤ 其の人應ふる能は弗る也。
といふ風に、「読める」からといって、
(15)
① 楚人有{鬻[盾〔與(矛)〕]者}。
② 譽(之)曰、吾盾之堅、莫(能陷)也。
③ 又譽(其矛)曰、吾矛之利、於(物)無〔不(陷)〕也。
④ 或曰、以(子之矛)、陷(子之盾)何如。
⑤ 其人弗〔能(應)〕也。
といふ「漢文」を、
① ソジンイウ、シュクヨジュンヨムシャ。
② ヨシヱツ、ゴジュンシケン、バクノウカンヤ。
③ イウヨ、キムヱツ、ゴムシリ、オブツムフツカンヤ。
④ ワクヱツ、イシシム、カンシシム、カジョ。
⑤ キジン、フツノウオウヤ。
といふ風に、「読めない」といふわけではないし、
(16)
私自身は、
① 楚人に盾與矛とを鬻ぐ者有り。
② 之を譽めて曰はく、吾が盾之堅きこと、能く陷す莫き也。と。
③ 又た其の矛を譽めて曰はく、吾が矛之利なること、物に於いて陷さ不る無き也。と。
④ 或ひと曰はく、子之矛を以て、子之盾を陷さば何如。と。
⑤ 其の人應ふる能は弗る也。
といふ「訓読」を、
① ソジンイウ、シュクヨジュンヨムシャ。
② ヨシヱツ、ゴジュンシケン、バクノウカンヤ。
③ イウヨ、キムヱツ、ゴムシリ、オブツムフツカンヤ。
④ ワクウェツ、イシシム、カンシシム、カジョ。
⑤ キジン、フツノウオウヤ。
といふ風に、「空で以て、それなりのリズムで、読む」ことが出来る。
従って、
(13)~(16)により、
(17)
私自身は、「漢文読法の最大の弱点は、意味がわからないと、読めないことだ。」といふ風には、思ってはゐない。
(18)
私自身は、「漢文読法の最大の弱点は、意味がわからないのに、読めることだ。」といふ風に、思ってゐる。


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