(01)
cf.
① 告げざる可からず。
② 我、鳥の樹に啼くを聞く。
③ 鳥獣は、これと与に群れを同じくする可からず。
④ 外人の為に言ふに足らざるなり。
⑤ 耕す者、益々急ならざる可からず。
⑥ 己にご如からず者を友とすること無かれ。
⑦ 当世の士大夫、劉老人有るを知ら不る者無し。
⑧ 聖人の知らざる所、未だ必ずしも愚人の知る所と為さずんばあらざるなり。
⑨ 曽子の母、子の人を殺さ不るを知ら不るに非ざるなり。
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ寒さを憂れふるを以て心を乱さず財有りて以て薬を剤さ使む。
⑪ 之を取らんと欲す。
⑫ 之を取捨せんと欲す。
(02)
従って、
(01)(02)により、
(03)
「レ点(レ、一レ、上レ、甲レ)」は「不要」である。
然るに、
(04)
従って、
(04)により、
(05)
「漢字」に『返り点』が「付く」といふことは、
『返り点』に「漢字」が「付く」ことと「同じ」である。
然るに、
(06)
① 四[三〔二(一)〕]
② 三〔二(一)〕
③ 丁[丙〔二(一)乙(甲)〕]
④ 下[中〔二(一)上〕]
⑤ 四[三〔二(一)〕]
⑥ 下{中[三〔二(一)〕上]}
⑦ 下{四[三〔二(一)〕]上}
⑧ 三〔二(一)〕、五{四[三〔二(一)〕]}
⑨ 六〈五{四[三〔二(一)〕]}〉
⑩ 人{丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一)地(天)}
⑪ 三〔二(一)〕
⑫ 三〔二‐(一)〕
に於いて、
#( )⇒( )#
#〔 〕⇒〔 〕#
#[ ]⇒[ ]#
#{ }⇒{ }#
#〈 〉⇒〈 〉#
といふ「移動」を行ふと、
① [〔(一)二〕三]四
② 〔(一)二〕三
③ [〔(一)二(甲)乙〕丙]丁
④ [〔(一)二上〕中]下
⑤ [〔(一)二〕三]四
⑥ {[〔(一)二〕三上]中}下
⑦ {[〔(一)二〕三]四上}下
⑧ 〔(一)二〕三、{[〔(一)二〕三]四}五
⑨ 〈{[〔二(一)〕三]四}五〉六
⑩ {[〔(一)二(上)中〕下(甲)乙]丙(一)二(天)地}人
⑪ 〔(一)二〕三
⑫ 〔(一)二‐〕三
といふ「順番」になる。
従って、
(01)~(06)により、
(07)
(ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ
(ⅱ)一 二 三 四 五 六
(ⅲ)上 中 下
(ⅳ)甲 乙 丙
(ⅴ)天 地 人
といふ『返り点』は、
(ⅰ)( )
(ⅱ)〔 〕
(ⅲ)[ ]
(ⅳ){ }
(ⅵ)〈 〉
といふ『括弧』に、相当する。
然るに、
(08)
(3)上中下点(上・下、上・中・下)
レ点・一二点だけで示しきれない場合。必ず一二点をまたいで返る場合に用いる(数学の式における( )が一二点で、{ }が上中下点に相当するものと考えるとわかりやすい)。
(原田種成、私の漢文講義、1995年、43頁)
従って、
(08)により、
(09)
① { ( ) }
② 下 二 一 上
に於いて、
①=② である。
従って、
(09)により、
(10)
③ { ( } )
④ 下 二 上 一
に於いて、
③=④
である。
然るに、
(11)
① { ( ) }
③ { ( } )
に於いて、
① は、『括弧』であるが、
③ は、『括弧』ではない。
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
「数学の式における( )が一二点で、{ }が上中下点に相当するものと考えるとわかりやすい。」
とするならば、
② 下 二 一 上
④ 下 二 上 一
に於いて、
② は、『返り点』であるが、
④ は、『返り点』ではない。
然るに、
(13)
従って、
(12)(13)により、
(14)
④ 只管要下纏二擾上我一。
に付く、
④ 下 二 上 一
は、『括弧』ではない。
然るに、
(15)
⑤( { [ ) ] }
⑥ 二 五 三 一 四
に於ける、
⑤ は、『括弧』ではなく、それ故、
⑥ は、『返り点』ではない。
然るに、
(16)
従って、
(15)(16)により、
(17)
⑥ 端‐的看二 不五 出三 這婆‐子的本‐事一 来四。
⑥ 西門慶促‐忙促‐急儧二造 不五 出三 床一 来四。
に付く、
⑥ 二 五 三 一 四
⑥ 二‐ 五 三 一 四
は、『括弧』ではない。
然るに、
(18)
「完全な口語表現」である「~出来」という方向補語も、こうした複雑な「返り点」が付けられることで何とか訓読される。」
とは言ふものの、
『返り点』を付けることが出来ない「それ」は、『漢文』ではない。
従って、
(14)~(18)により、
(19)
④ 只管要下纏二擾上我一。
⑤ 端‐的看二 不五 出三 這婆‐子的本‐事一 来四。
⑥ 西門慶促‐忙促‐急儧二造 不五 出三 床一 来四。
並びに、
⑦ 吃二了不三レ 多酒一。
等の「白話文(中国語)」は、『漢文』ではない。