時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

サラトガ・スプリングスの紅葉

2006年11月28日 | 回想のアメリカ

  毎年、紅葉の時期になると思い浮かべる光景がある。そのひとつはかつて何度か訪れたニューヨーク州北部アディロンダック国立公園の紅葉である。日本の紅葉も実に美しいが、この地域の秋も視界全面、目を奪うばかりに紅葉して素晴らしい。

  今回は箱根の紅葉と温泉からの連想で、同じニューヨーク州北部のサラトガ・スプリングスの思い出の一片を記してみたい。場所はニューヨークから車で3時間くらい、サラトガ・スパ州立公園の中にある。その名前から連想できるように、ここにはアメリカでも珍しい間歇泉の温泉がある。ニューヨーク子やニューイングランドの人々のリゾート地である。またアメリカ最古の競馬場があり、独特の華やかな雰囲気をかもし出している。近くには、ギデオン・パトナム・ホテルというジョージアン風の素晴らしいホテルもある。

  この地を訪れることができたのは、まったく偶然であった。いまや生涯の友人であるB夫妻の奥さんが、サラトガ・スプリングスにある名門スキッドモア・カレッジ Skidmore College の卒業生だった。今では男子学生も4割近く入学しているが、1960年代の終わり頃は全学生1000人ほどの女子カレッジだった。一緒にニューイングランドの秋を楽しんだ時、キャンパスへも連れて行ってもらった。当時は男子禁制だったが、特別に見せてくれた。ドミトリーなど、高級ホテルに見えるほどの設備が準備されていた。学生が髪を洗うのに楽なように洗面台を設計したなどの説明を受け、そこまで配慮するアメリカの豊かさを感じた。そして、キャンパスの紅葉が実に美しかった。

  サラトガ・スプリングスの競馬は大変有名であり、Mさんは大学卒業後も、ニュージャージーで3人の子供を育てながら、しばらく乗馬クラブやスキーなどの競技会に出ていた。文学評論にも通じていた。アメリカの中産階級の人たちの人生とはこういうものかと思ったが、その後の人生にはかなり大きな波乱が待ち受けていた。

  サラトガ・スプリングスを訪れた頃、アメリカはベトナム戦争にかかわり敗色濃く、社会は急速に変化していた。少し経って振り返ると、アメリカの良き時代の終わりのひとこまを垣間見たような思いがした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする