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   桑原靖夫のブログ

歴史を逆行するアメリカ:「児童労働」緩和の動き

2025年04月15日 | アメリカ政治経済トピックス


少女はなにを見ていたのだろうか

この写真(再出掲載)アメリカ労働史の一コマを今に伝える上で、筆者の好きな一枚だが、彼女はアリカの未来になにを思っていたのだろうか。今ほど、その聡明そうな視線の先が知りたい時はない。

歴史は逆行するのか
トランプ大統領の衝撃的な政策の導入で、世界は大きく激動し、「混迷の世紀」となった。TV、新聞などに「大恐慌」、「児童労働」の復活などの言葉が目につくようになった。大統領が作り出した「マッチポンプ」のような印象も高まっている。

筆者は、半世紀以前から「児童労働」「女子労働」の国際比較をひとつの研究課題としてきた。

ブログでもいくつかの例を紹介したように、現代アメリカでは「児童労働」は、禁止・消滅の方向へ向かっていると考えがちであった。ところが現実は異なるようだ。児童労働を緩和して認める動きが台頭している。

アメリカでは、「児童労働 」child labor は  Fair Labor Standards Act of 1938 では、全職業で16歳以下か指定された危険なあるいはwell-being あるいは教育関連で害を与える職業で16−18歳の労働者を
かせることを指す。

ひとつの例を挙げてみよう。最近では、フロリダ州で「未成年者の雇用」に関する規制緩和を求める法案が州議会へ提出された。16~17歳の子供に翌日学校がある場合でも、午後11時から登校日となる翌午前6時半まで働くことを認める法案である。さらに、学期中に働くことができる上限時間数を週に30時間とする規定を撤廃するほか、4時間働いた後に休憩をとる権利も取り消される。この法案を提出したジェイ・コリンズ州上院議員(共和党)は、単に連邦児童労働法(1938年制定)に合わせただけで、若者にとっても有益だと主張、「社会生活に必要なスキルを習得するため」と述べた

2021年から26年にかけて、31の州が児童労働の規制緩和を認める法案を提案した。反対にコロラド州のように規制強化を進める州もある。

アメリカ全土について、労働省統計をみると、不法に雇用されていた児童  minorsの数は2015年以降、上昇している。

「合州国」United Statesであるアメリカでは州毎の差異が大きいことを考えると、驚くべきことではないかもしれない。しかし、この動きは企業団体が主導する、移民が多数、強制送還される状況で、賃金上昇を緩和する狙いという。「児童労働」を賃金圧力を抑制する手段とするのは、歴史の流れに逆行すると考えざるを得ない(下掲『日本経済新聞』掲載記事)。

逆行への衝動
歴史上「児童労働」が多かった繊維や衣服産業では、18歳未満の夜間労働は19世紀前半に禁止された。しかし、今日、アメリカ全体の潮流とは言えないまでも、一部には1800年代へ逆戻りしたいとの動きが高まっているようだ。

世界的にも児童労働はほぼ20年ぶりに増加している。法定最低年齢未満の子供が雇用されたり、長時間労働が許可されていたり、危険な条件で働いている。これらは、国内法と国際法の両方の下で、児童労働法と子どもの権利に違反している。

かつて、アメリカは労働条件改善への試みでも、世界をリードする役割を果たしてきた。

密かに拡大する児童労働
アメリカの労働省は、2022年10月から2023年7月の間に不法に雇用された子供の数が44%増加したと報告している。2023年2月のニューヨークタイムズの調査では米国全土のサプライチェーンで子供たちが直面する悲惨な状況と危険な仕事が強調された。いくつかの有名な企業も関与している。

この報告書に対する政府の対応には、法改正、罰則の強化、雇用者に対するより厳しい執行の呼びかけ、新しい戦術を導入する計画、児童労働法の施行のためのさまざまな機関や外国政府とのパートナーシップが含まれていた。しかし、児童労働者の法的保護を水増したり制限したりするために、少なくとも2ダースの州レベルの立法イニシアチブがあり、そのうちのいくつかは成功裏に制定されている。

詳細を記す余裕は今はないが、社会の未来を担う子供たちが、現在の問題を緩和するために、過酷な条件下で働かせられることだけはいかなる理由であれ、許されるべきではないと改めて思う。働き方の将来に光を期待して、過酷な条件で働いていた子供たちの願いを裏切ってはならない。

サラ・オコナー、エンプロイメント・コラムニスト(Financial Times)「米国、児童労働緩和の動き」『日本経済新聞』2025年4月14日付)


goo blogが突然閉鎖されるようだ。本ブログも幕を下ろす時が近い。四半世紀近くお付き合いくださった方々も多く、ご意見をうかがいながら、今後を考えたい。



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