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澤地久枝『密約』について(4)

2007-01-02 00:11:34 | 
テレビ朝日系の『ザ・スクープ』という番組が、2006年12月10日、西山事件を取り上げた(「沖縄返還35年目の真実 ~政府が今もひた隠す”密約”の正体~」)。私はネット配信の映像で見た。老境に入った西山氏の凛とした姿を見ることができたのは満足であった。

何よりも驚いたのは、吉野文六氏が出演し、密約について淡々と語っていたことである。そしてさらに驚いたのは、2000年アメリカ公文書公開により、「密約」が明らかになったとき、外務省高官から吉野氏に対して、「密約」に関しては、従来通りの方針(すなわち密約は存在していないということ)で行きましょうという電話がかかってきたと、吉野氏がこともなげに語ったことであった。さらに追い打ちをかけるように、吉野氏は、外相からも直々に同趣旨の電話があったと語ったのだ。

2000年の外相といえば、河野洋平氏だ。実は河野氏は、西山事件裁判控訴審で弁護側証人として出廷したのだ。澤地氏の要約によれば、1975年11月27日、河野氏は次のように発言している。

「父子二代の与党政治家の体験から、マスコミの役割を高く評価し、外交交渉について、開かれた場で、徹底した取材活動がなされなければ後遺症を残すと証言」

つまり河野氏は一般論ではあるが、西山氏を弁護しているのである。25年後に外相になったとき河野氏は、その西山氏が裁かれる原因になった密約に関して、従来通りで行きましょうと吉野氏に求めたというのである。河野氏は、外相として、別の大きな目的を追求していたのかもしれない。そのために昔の密約問題で省内に波風を立てたくなかったのかもしれない。たとえそうだとしても別のやり方が、あったように思える。(もっとも、公平のために記せば、国会においてこのことが2006年質問されたとき、麻生太郎外相は、当時の外相から吉野氏にこのような電話があったことは承知していないと答弁している。)

さらにまた驚いたことに、当時検察のサイドでこの裁判を「情を通じる」という方向に誘導したのは、現在の民主党参議院議員佐藤道夫氏であるということだ。佐藤氏も『ザ・スクープ』に出演していた。そして当時知識人が「国民の知る権利」と騒いでいたことに対抗するために、「情を通じる」というスキャンダルの方針を打ち出したと述べていた。佐藤氏は、スキャンダルこそが事実であると確信していた。なお国会で佐藤内閣を追及していた横路氏も、今では同じ民主党に属する。両氏はこの問題について、意見交換をしたことがあるのだろうか。

西山事件はまだ終わっていない。西山氏は、密約の存在がアメリカ側文書から確認されたことを契機に、不当な裁判で被害を被ったと国賠訴訟を行っている。裁判は結審し、来春判決が出されるという。裁判所は、密約に対してどのような判断を下すのだろうか。

『ザ・スクープ』
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