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澤地久枝『密約』について(3)

2007-01-01 00:36:52 | 
私はこの「密約」(米軍基地原状回復に関する費用400万ドルを日本が肩代わりするが、あたかも米国が支払ったかのようにすること)にさほど関心がないと言った。実際、大学の講義において沖縄返還交渉について簡単に説明するとき、私はこの「密約」に触れることはない。私が、日本政府は常に正しいことを行っているという立場に立っているからではない。

沖縄返還には、これよりももっと大きな「密約」があるからである。例えば、沖縄返還の代償として、日本がアメリカに対する繊維製品輸出自主規制を約束したこと。またこの交渉で密使をつとめた若泉敬氏が『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス 』で明らかにしたように、有事に沖縄に核兵器を持ち込む約束をしたことを説明することで手一杯であるからなのだ。

さらにお金の話しをすれば、沖縄返還の際に日本がアメリカに対して負担した金額3億2000万ドルそれ自体が、そもそも「つかみ金」みたいなものなのだ。例えばその中に、沖縄に存在した核兵器の処理費として7000万ドルが計上されているが、実際の費用は500万ドルであるのだ。このようなことを考えると、400万ドルのお話は陳腐に思えてしまう。

もちろん陳腐と書いたのは、私の傲慢のなせる技である。この「陳腐な密約」すら、日本政府は一つも認めていない。陳腐な密約を認めると、すべての密約が明らかになという連鎖が恐れられているのだろう。

しかし驚いたことに、2006年2月、吉野文六氏がこの「陳腐な密約」を認める発言をしているというのだ。吉野文六氏は、西山事件のときの外務省条約局長であった。裁判では、吉野氏は職務上、密約は存在しないという証言を行った。

吉野氏が、一転して密約を認める発言をした真意はよく分からないが、2000年、2002年にアメリカ公文書の公開により、この密約がアメリカサイドから明らかにされたことが関わっているらしい。(続く)

池田龍夫『沖縄返還密約「吉野文六証言」の衝撃と米軍再編』
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