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『ニートって言うな』

2006-11-29 00:12:57 | 
ゼミでニートの話題が出て、学生さんがそれぞれいろんな意見を述べて、大変盛り上がった。ニートという言葉はよく聞くが、それについて深く考えたことがなかった。私はニートとは、フリーターとは対極にある、働くのが嫌な若者たちであると素朴に考えていた。若い人の間にニートが増えているのは、嘆かわしく困ったものだと考えていた。とりあえず、本田由紀他『ニートって言うな』(光文社新書)を読んで見て、ずいぶんいろいろと考えさせられた。

ニートとはNot in Education, Employment or Training の略である。イギリスで最初に使われた言葉である。2003年頃から日本でも使い始められた。しかしイギリスでの用法と、日本での用法は相当違う。イギリスでは16歳から18歳までを対象にしていて、特に貧困、低学歴、人種的マイノリティのために、社会から排除されがちな人物をいかに救うかということにポイントがあるという。この中には当然失業者が含まれる。しかし日本でニートというと、対象が15歳から34歳に拡張され、その中に失業者は含まれていない。マスコミでは、ニートは「ひきこもり」などと同じ意味合いで使用される傾向が強い。

本田氏はニートという概念が含む問題を提起する。すなわちニート中には、「ひきもり」「犯罪親和層」なども含むが、「とりあえず働く必要もない人」、さらに「非求職型」すなわち働く意欲があるが当面は求職していない人々(進学希望者、資格取得中のもの)を含む。概念的に雑多なものである。さらに第3のカテゴリは、ニートとはされない失業者やフリーターとの関連が非常に強いが、ニートという概念はそのあたりの理解を困難している。概念として有効であるかどうか問題であるという。

さらにそれだけでなく、ニートという概念が現実を覆い隠しているということに注意をも促す。長期不況や、グローバルな経済競争のため、日本の企業が人件費を切りつめたために、正社員を減らして、非典型的雇用を増やしているため、若者の失業率が高まっていることが隠されていることである。すなわち考えられるべきは、労働需要側を刺激していかに仕事を増やすかということであるべきなのである。しかしそれが無視されて、問題が労働供給側の問題、つまり若者がだらしがないこと、またやる気がない、それゆえにいかに教育するのかということにすり替えられてしまっているということであるという。

さらに本田氏は学校と企業との関係にも批判的視線を投げかける。現状では長期不況などの理由で、学校を卒業してすぐに就職する「学校経由の就職」が縮小しているが、しかしこのルートが正社員への独占的ルートと位置づけられていることは変わっていない。ゆえに「学校経由の就職」にたまたま失敗してしまった人は、正社員になれる確率が非常に少ない。本田氏はフリーターとして働いている人たちが、必ずしも正社員に劣ることはないと指摘し、企業側にフリーターを雇用するようにと促している。さらにそれだけでなく、正社員と非典型雇用の人物の間との格差を緩和するようにも提言している。

また本田氏は学校教育にも批判的で、日本では「教育の職業的意義が希薄」であると談じる。本田氏の言うのは今日はやりのキャリアデザインとかいう一般的なものではなく、もっと専門的具体的な教育であるようだ。この問題は、我々としても考えていかざるを得ないであろう。
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