どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

サルとカエル・・福島

2023年04月18日 | 昔話(北海道・東北)

        福島のむかし話/福島県国語教育研究会編/日本標準/1977年

 

 むかし、山の上の森にいっぴきのサルが、その下の田んぼにカエルがすんでたんだと。

 ある日のこと、サルがカエルのところへやってきて、「うめえ餅でも食いたいと思ってきたんだが」ともちかけると、カエルは、「うめえ餅食うにはどうやるんだ」と聞く。サルは、「うめえものっていうのは、今すぐ食おうと思ってもできねえもんだ。これから おまえさんと田んぼを作って、秋には食いきれないほどの餅をついて、タヌキどんのように、腹づつみうってもてえもんだなあ」って、もちかけた。

 相談がまとまって、やがて春になって、お百姓が苗代の準備をはじめるが、サルからはいっこうに便りがない。カエルがサルのところにいくと、昨日から腹が痛くて、一人で苗代を作ってくれと、にわかに腹をおさえて、ウーンとうなる。

 正直なカエルは、わき目もふらず、苗代づくりに精を出し、種まきのだんどりになるとサルをたずねるが、サルは腹痛がまだよくなっていねえという。仕方ないのでカエルは、せっせともみをまき、水をかけて、苗を育てた。田植えの時期になると、またサルを訪ねていくと、こんどは木からおちたと寝床にもぐりこむ。

 それからカエルは、暑い盛りの草取りも一人でやって、やがて秋。ずっすり実った稲穂の取入れも終わるが、それでもカエルは顔を出さない。

 もち米もたんととれ、あした餅つきするからとサルのところへいくと、おれ、もちつきするという。

 サルは、餅をつきおわると、向かいの山のてっぺんから、臼ごと落として、先に餅さ追いついたほうが、全部食うことにすべえと、持ち掛ける。

 次の日、臼を山へもちあげ、「一二の三」で転がすと、臼はどんどんころがり、木の根っこにぶつかったはずみで、餅が臼から飛び出てしまう。サルはそれに気がつかないで、臼をおいかける。カエルがぴょこんとゆっくりはねていると、目の前に餅。大喜びして餅を食いはじめた。下の沢まで、転げ落ちていった臼に、ひとかけらの餅がついていないのをみたサルが、あっちこっち探しながら登っていくと、カエルどんが、さもうまそうに餅食っていた。

 「カエルどん、おれにも ちっと食わせてくれんか」とサルが言うと、カエルは見向きもしないで、「サルどん、神さまはちゃあんとみている。おらにおさずけくださったんだ。なまけもんのあんたには、ひとかけらだってやらん」と、いったんだと。

 

 最後のおいしいところだけをとろうとして、しっぺ返しされるのは、当然か。


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