どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

パンやのろくちゃんシリーズ

2019年04月10日 | 長谷川善史

 いつも楽しませていただいている長谷川さんの「ぱんやのろくちゃんシリーズ」、どれも人と人とのあたたかさが感じられます。


      パンやのろくちゃん/作・絵:長谷川 義史/小学館/2006年初版


 4コマ漫画が4つと、オムニバス風の話が4つと大サービス。

 <おつかいにいくのまき>
 カレーにつかう牛肉の買い物を頼まれたパンやのろくちゃん。急いで走って、すべってこけた途端に、「なんのにくだったけ にくにくにく」といっていると、八百屋おやの大将が「にんにく ひとつ まいどありー」。ろくちゃんにんにくを買うことに。「にんにくじゃ ないとおもけど まあ しょうがない」というと、しょうがをかうはめに。にんにくでもしょうがでもないと、ろくちゃんなみだがでてきて「はっくしょん」すると、こんでは、八百屋の大将が白菜もほしいのかと、白菜も買う。残ったお金で挽肉200gを買って家に帰ります。
 でも、この買い物、大好きなぎょうざにばけます。

 <しょうてんがいでおこられるのまき>
 商店街の真ん中で、ボールをもって遊んでいると、けったボールが、魚屋の大将に、大当たりして、魚も飛び散り、大目玉。
 泣きながら歩いていると、お菓子屋のおばちゃんは、あられを一袋、肉屋ではチーズ、花屋のおねえさんはみかんを、カレー屋のおじさんはリンゴを一つ、おまけに魚屋のの大将は、自転車でろくちゃんをおくってくれます。

 <おみせばばんをするのまき>
 ろくちゃん、はじめてお店番をすることに。
 お客がこないので、パンの袋を頭にかぶり、店の前で踊り始めると、つぎつぎにお客さんが。
 パンが売れすぎて、おやつで食べようと思ったクリームパンまでなくなって、ろくちゃんは泣き出しますが・・・・

 <いぬをかいたいようのまき>
 幼稚園の友達のゆきちゃんは犬をかっています。
 ろくちゃんも犬をかいたいとお願いしますが、パン屋だから犬がお店でうんこしたりしてはいけないからいきものはかえないんだよと、おとうさん。
 この話をきいていたおばあちゃんが、ふふふふと笑い出します。・・・・・

 泣いていると心配したお店の人が、手をさしのべてくれる人情味のある商店。
 ふだん行きつけのお店だと、客の状況も知っているお店の人が、いろいろ声をかけてくれます。なくしたくない風景ですが、いつまでもつものか。

 八百屋さんには、「やさいをたべてべんぴをなおそう」という貼り紙がさりげなくあり、肉屋さんには「にくくっているか」の貼り紙。カレー屋は「インドのおっさん」という名前。4コマ漫画のおちも楽しい。


        パンやのろくちゃん うんとね/2007年初版

 ”まいごになっちゃったのまき”では、今ではみられなくなったデパートの屋上ののりものにのって、うれしくていつのまにか迷子に。
 店内放送で知ったおとうさん、おかあさんの顔を見た途端に涙もとまりますが、大変なことにきがつきます。

 ”えんそくのおべんとうのまき”では、炊飯器が故障して、遠足にもっていくお弁当は、お店のサンドイッチに。きになって動物園の楽しさも半減。でもお昼にお弁当を食べようとすると、みんなおにぎりやおかずと交換してとやってきます。

 ”ひとりでさんぱつにいくのまき”では、双子のやおやのたいしょうとさかなやのたいしょうからいわれて、、こっくりこっくり眠ってしまいます。目が覚めてきがつくと、前髪がとってもみじかくなっていて。

 ”ろくちゃんをびっくりさせるのまき”では、ある日、おじいちゃん、おとうさん、おかあさんもそっけなく、遊んでくれないなにかいつもと違っています。おばあちゃんにいわれて太巻きをつくる手助けを。
 じつは、この日はろくちゃんの誕生日。ごはんの時間にはサプライズがまっていて、ろくちゃんははずかしくって、顔がまっかか。

 お店のサンドイッチをお弁当にもっていくのが、なんかきはずかしくて、こっそりお弁当を食べようとすると、みんなは、ろくちゃんのおみせのサンドイッチは美味しいからと、おにぎりやおかずと交換してとやってくるところ、ろくちゃんの気持ちが痛いほどわかります。

 ろくちゃんのおうちは、パン屋さんなので、表紙においしそうなブドウパン、フランスパン、コッペパン、ウインナーパンなどが描かれています。


        パンやのろくちゃん でんしゃにのって/2009年
  
 パンやのろくちゃん、おじいいちゃんと、おかあさんのおばあちゃんのいなかへ、お届け物もって、電車の旅です。
 電車に のるとすぐ、おべんとう。三段重ねでおもわずよだれ。

 そこへみかんがころがってきて、おじいちゃん、まきずしのお弁当箱をもって、若いお姉さんたちの席へいったきり(若返りの秘訣かな)。

 二人だったのに一人旅になり、車掌さん「ひとりたびで ございますで ございますか。じぶんさがしの たびで ございますね」と、一人合点で感激しきり。

 「コリ アンター、どうしたんだあ」と、カレー屋のおじさんも登場です。やれやれ一安心とおもっていると、カレーやのおじさん、すぐに退場です。

 トンネルをぬけたら、のってきたのは、おやこのたぬき。つぎに「ここに すわらせていただきやしょう コン!」と、きつねのおやこずれ。くまもおさるもおやこずれ。

 おいしい弁当も「人の ものは どうぶつのもの ポン」とたべはじめますから、ろくちゃん、泣き顔。でもどうやら、ろくちゃんの夢の世界だったようですよ。

 裏表紙で、おじいちゃんといいきもちで五右衛門風呂にはいっていると、まどから のぞいていたのは?

 軽妙なやり取りが楽しめました。 


       パンやのろくちゃん だからね/2012年初版

 ”ようちえんのおとまりがっしゅくのまき”では、ろくちゃんがカレー作りのため、たまねぎをきっていると、めにしみてなみだ。

 ゆきちゃんが心配して声をかけてくれます。すいかわりで、地面をおもいきりたたいて、てがしびれ、またなみだ。ゆきちゃんが心配して声をかけてくれます。

 おやすみのとき、おかあさんがこいしくなって、ちょっぴりなみだ。ゆきちゃんがまたまた声をかけてくれます。

 あさ、おねしょで、ふとんがぬれています。するとせんせいがやってきて「あらあら ろくちゃん、昨日がんばって たまねぎ きってくれたから、こんなに なみだが でちゃったのね」と、すかさず見事なフォローです。

 ゆきちゃんのやさしさ、素敵な先生とあたたかい幼稚園です。

 えでかくしりとり遊びがでてくるのは”こどものひにしょうぶゆにはいったよのまき”。

 カレー屋のおじさん、ろくちゃんを「コリアンター」とよびます。頭にタオルをのせたすがたはシリーズ一冊目にでてくる「インドのおっさん」です。              


おかめ千げん・・徳島

2019年04月10日 | 絵本(昔話・日本)

  

      おかめ千げん/絵・文 飯原一夫/教育出版センター/1980年


 出版社は徳島。阿波の民話絵本です。

 ひろい海のうえに、ぽつんと一つ、かめがうかんだようにみえる島がありました。

 港にはたくさんの船がでたり、はいったり。港のあたりにはたくさんの家があって「おかめ千げん」といわれるほどで、たいそう賑やか。

 島には、古いお宮があって、そこにはこまいぬがありました。このこまいぬの目が赤になると、島は海の底に沈むといういいつたえがありました。
 島の人は、お宮にお参りすると、かならずこまいぬの目をみて、なにもかわっていないのを、確認していました。

 この言い伝えを悪用して一儲けを考えた海賊。こまいぬの目を赤くぬって、みんな逃げ出したところで、ゆっくり すきなものをいただこうという算段。
 海賊の一人がくらいなかで、目だけでなくからだまで真っ赤に色をぬってしまいます。

 こまいぬの目が赤くなったのをみて島の人々は、一人残らず何も持たず島を逃げ出します。

 海賊たちは目論見通り、島の人が残していった宝物をあつめて、大喜び。

 ところが急に空も海も暗くなって・・・。

 こまいぬが全身赤くなる場面をのぞけば、全ページ モノクロで切り絵を思わせるタッチで描かれています。

 地方の小さな出版社?の本は、なかなか見る機会がありません。頑張っている出版社があるのはうれしい限りです。作者も もちろん徳島の方です。