わすれんぼうにかんぱい!/作:宮川 ひろ 絵:小泉 るみ子/童心社/2011年
宮川さんの物語に出てくる子どもや先生は、とてもやさしくほっこりします。
お母さんが結核で入院することになり、お父さんも出張が多いので、まゆみは、おばさんの家でくらすことになりました。おみまいにも行けないさびしい思いのまゆみに、転校した先の土屋等先生は、「わすれんぼうになろう」といいます。
ズボンをはきかえたときベルトをわすれて、ハンカチをむすびあわせて代用した昭一郎に、先生は「わすれんぼうはこまって、それから知恵がうまれる」といいます。
校長先生がお話の種をひろってきて、朝礼のとき話をするのですが、ある日、あいさつだけでおわろうとすると、良平が「ゆうべのごはんの話をしてください」と声をかけます。すると校長先生は、自分で作っている味噌ができるまでの話をします。
「校長先生のわすれんぼうって、いいもんだよな!」と、クラスのみんなは牛乳で乾杯です。
中村こずえのおばあちゃんが「けさはわすれ霜よ」といったことを詳しく聞いてきて、みんなに教えてくれないかと先生にいわれて、四人がこずえのおばあちゃんのところにでかけます。
おばあちゃんは「わすれるって、こまることでもあるけれど、大事なことでもあるんだよ。つらいことはわすれて、前へすすまなければならないものさ」お好み焼きをつくりながら話をしてくれます。
そして「年わすれ」「わすれ水」「わすれ花」「わすれ潮」「わすれ貝」など昔の生活についても話してくれます。
図書館で借りた本を返し忘れ、おまけに一冊をなくしてしまったのは圭太でした。
先生は、おじいさんの納骨式のとき、おそなえする果物籠を電車に置き忘れてしまいます。
この物語で「乾杯!」は、ちょっとうれしいときの乾杯ですが、宮川さんは、落ち込んだり失敗するたびに「かんぱい」をしてきたといいます。一歩前に踏み出すきっかけになっていたのでしょうか。
悲しみや辛いことは忘れられませんが、ときには忘れるのが救いになることも。
「がんばって」といわれても頑張れないことも「わすれんぼうになろう」と声かけした先生も素晴らしい。
絵本ではありませんが、挿絵の子どもたちもいきいきしていて、いやされます。
かえってきたクレヨン/文:ドリュー・デイウォルト・文 オリヴァー・ジェファーズ・絵 中川 ひろたか・訳/WAVE出版/2016年
ダンカンが、おにいちゃんからもらったクレヨンでお絵かきしていると、絵葉書のたばがとどきました。
残っているクレヨンからも、どこかに忘れられたクレヨンからも不平たらたら。
たった一度つかって、それっきりソファのすきまにはいって、たいパパがその上にのっかって真っ二つになった えびちゃクレヨンは、はやくもとのところに帰りたようですよ。
ズボンのポケットにいれられたまま、洗濯、乾燥された そらいろクレヨンは、くつ下とくっついてSOS。
「う〇こ」だけはかんべんと 家出をしたのはちゃいろクレヨン。
いぬにくわれたあと、ペッて、はきだされた、もと おうどういろは「はるかい? なつかい? あきかい? いや、ふゆかいきわまりない」と、おむかえのお願い。
まめみどりいろあらためスーパストロングマンは三度度登場。一度目は世界を旅する予告、二度目は扉をあけてくれないかというお願い。三度目は雨が降っていたので帰るというもの。
プールサイドにおっこち、おいてきぼりにされたたネオンレッドは旅の途中。ラクダに乗って鳥取砂丘を横断中、そこにはピラミッドも。訳者の遊び心かな。もういちど登場すると、アマゾンのジャングルでスキー中。アマゾンで雪ふったけ?
ネオンレッドが、ピサの斜塔をささえる裏表紙は、おまけか。
とってもユニークな手紙。はじめ長いかなと思ったら、再登場があったりで楽しめました。
”大事にしなさい” ”かたずけなさい”と、ガミガミいうより、こっちのほうがよっぽど効果がありそう。
チュチュをきたトラ/作:ファビ・サンティアゴ 訳:tara/文化出版局/2019年
トラのマックスのなによりもかなえたい夢、それはバレリーナになること。
バレエ学校に通っても、トラは稽古させてもらえません。
それでもマックスはあきらめず、パリのまちでおどります。
おどっておどってエッフェル塔のてっぺんで、きめのポーズ。
そんなマックスにひとりの小さなバレリーナが話しかけてきて、オペラ座で踊ることに・・・。
トラとバレエという夢のある絵本。
ピルエット、グラン・ジュテ パ・ド・シャ そしてレヴェランスとバレエの専門用語も理解できました。
いかにも楽しそうに踊るトラ、つまらないことなどふっとんでいきそうです。
エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする/エリナー・ファージョン・作 シャーロット・ヴォーク・絵 石井 桃子・訳/岩波書店/2004年
三日月の晩、ケーバーン山でなわとびをするというしきたりをつくったのはだれかということが忘れられ何十年か経たちました。
荘園に住む領主は、次々に入れかわり、村もかわっていきます。
古い家族は死にたえ、新しい家族がやってきました。遠方にひっこししていくものたちもいました。
新しい領主は、山道をふさぎ、村人たちの通行権を取り消し、あちこちの共有地を出入り禁止にします。
そして、地代をあげ、村人ががまんできないほどの税をおしつけました。
さらにケーバーン山の頂上全部を柵で囲い、だれも山の上を通さない計画をたて、工場を建てるといいだします。
村人たちは、領主にひとつの提案をします。これまでに、そこでなわとびをしたものに、一人残らずもういちど三日月の晩、順番になわとびをさせるというのです。
そのなわとびがおわったら、工場をたてさせるというのです。
領主は「やつら、折れて出たな!」とあざわらい、なわとび大会を開くことに同意します。
村中のよちよちあるきの子から、おとなになった娘も、若い母親も、中年のおっかさんもぞくぞくとケーバーン山にあつまります。
村中のひとがとびおわったとき、領主は工場建設のためのレンガを据えようとします。
そのとき一人の老女が進み出ます。109歳という老婆が、子どものころケーバーン山でなわとびをしたというのです。
約束は”一人残らず”ということでした。
「エルシー・ピドック! エルシー・ピドック!」人々のあいだに、ささやきが走ります。ケーバーン山でなわとびをするというしきたりをつくったのは伝説となったエルシー・ピドックでした。
エルシー・ピドックがとびはじめます。一時間、二時間、三時間がたち、朝がやってきてもとんでいます。
「時間ぎれだ!」とさけぶ領主に、「わたしが、とびおえたとき、レンガを据えなされ。」とエルシー・ピドックは、とびつづけます。
この村の子はだれもがケーバーン山でなわとびをしてきたのです。その場所をまもるためとびつづけるエルシー・ピドック。
前半部もながく、エルシー・ピドックのちいさいころのエピソード。なわとび上手の女の子だったエルシー・ピドックの評判が山の妖精にまで届き、なわとびの名手アンディ・スパンディから、数々のなわとびの技を教わります。
ストーリーテリングがなにかよくわからないまま、2年ほどたって、この話にふれたときのことを思い出しました。たんたんと語られていましたが、気がつくと時間は50分ほどたっていました。
109歳は印象に残っていませんでしたが、読み直してみると、なわとびが女の子だけのものというのがやや物足りません。
なわとびの歌「アンディ、スパンディ、さとうのキャンディ、アマインド入りあめんぼう!おまえのおっかさんのつくってる晩ごはん パンとバターのそれっきり!」は、どんなメロディでしょうか。
くずかごおばけ/作・絵:せな けいこ/童心社/2017年
くずかごから黒ーい手が ニューとのびてきて、くずかごにひきこまれてしまった女の子。
女の子がポイポイすてた人形、おだんご、おさかな、ちょうちん、せんす、ふでなどのおばけが、「すてたのは、だれだ!」とおいかけてきます。
暗い中を夢中で走って、ねずみがあけた穴からおもてにとびだし・・・。
ごったにすてられている中身はやや時代物。
初版が1975年で50年近くたっていますので、当時の状況をあらわしていたのでしょうか。
リデュース(発生抑制)リユース(再使用)リサイクル(再生利用)がまださけばれていなかった時代の産物でしょうか。
子どもに人気のあるせなさんですが、いまだったらどんなお化けを描かれるでしょうか。
親があれこれいうより、読んだ子が自分で考えるきっかけにしてほしい絵本です。
かぁかぁもうもう/丹治 匠・作/こぐま社/2016年
からすのうたは ♭かぁかぁかぁ
うしのうたは ♭もうもうもう
♭かぁかぁ ♭もうもうのなきごえ対決です。
まずはどちらが大きいかなきくらべ。
かぁかぁかぁ
もうもうもう
にらみ合いひとやすみすると今度は はやさの勝負
かかかかかかかかかかかかかかあ
ももももももももももももももう
次はながさの勝負
そして楽しい歌い方
かあ かあ かかかあ か~か か~か かあ
もう もう もももう も~う も~も もう
最後はちゃんと仲直りです。
絵も、からすが青、うしは黄色と最小限。なきごえも一役かっています。
シンプルですが、おもわず引き込まれます。
かけあいで読むのも楽しそうです。
スペイン・カタルーニャのむかしばなし まめつぶこぞう パトゥフェ/宇野 和美・文 ささめや ゆき・絵/BL出版/2018年
赤ずきんならぬ赤い帽子をかぶった豆つぶのように小さな男の子パトゥフェ。
豆つぶくらいの子とくれば、こどもがなかった夫婦に生まれるところからはじまるのが普通ですが、このスペインのカタルーニャ地方の昔話では、はじめから小さいままです。
小さなパトゥフェは、なんでもやりたがり、どこにでも行きたがる子。
おかみさんがふみつぶされると心配しても、シチューに入れるサフランを買いにでかけます。
かごをもてるもんかとおかみさんにいわれれても、かごをひょいともちあげて、おとうちゃんにお弁当をもっていきます。
ところが途中で雨にあい、キャベツのはっぱのしたにもぐりこむと、キャベツごと牛に食べられてしまいます。
さがしにきたお百姓とおかみさんの声はきこえるのですが、パトゥフェが牛のおなかの中で歌う声は、お百姓とおかみさんにきこえません。
さあこのまま、パトゥフェは牛のなか?
でも、牛が・・・。
おつかいにいくときの歌は童謡として、大人になっても多くの人がうたえるようです。
独特な風合いの絵で、パトゥフェは はじめからおわりまで小さく描かれ、ブタやニワトリ、ネコ、イヌもさりげなくでてきて、この昔話にピッタリです。
カタルーニャといえば、独立住民投票に関連して、中央政権と州政府が対立し、自治権の一時廃止、州首相の事実上の亡命が2017年のこと。独自の文化と伝統をもっているからこそ独立を望む人もおおいということでしょうか。
こんにちワニ/作:中川 ひろたか・作 村上 康成・絵/PHP研究所/1999年
左は「こんにち」右は「ワニ」
左は「いただき」右は「マスク」
左は「いないいない」右は「ばあちゃん」
と快調につづいていきます。
まさにことばあそび。
なんだか自分でもあそびたくなります。
どなたか「おわ」「リンゴ」とつづけていましたが、「リス」もありでしょうか。
しりとりあそびの応用編のよう。
さあ、なげますよ/角野 栄子・作 山村 浩二・絵/文溪堂/2017年
ノビくんは、ボール投げの名人。
剛速球?を投げ込むので、うけとめた子がしりもちをつくほど。みんなから敬遠されて、壁に向かって一人投げです。
今日も壁にむかって投げていると、「やめて!いえがこわれちゃう」と、ちいさなおばあさんがでてきます。
「ボール投げの相手がいない」というノビくんに、おばあさんは、相手をしてあげるといいますが、ノビくんは「むりむり」と、ことわります。
そういわれると だまっていられないおばあさんで、いばって ぎろって にらみつけます。
おばあさんは、ボールを受け取って手をぐるぐるまわし「えいっ」と投げはじめますが・・・。
このおばあさん、最初からノビくんの気持ちをくんで、相手をしようと思っていたのかな?
さまにならないおばあさんが、ノビくんまで届くボールをなげるまでのやりとりが軽妙で、絵に出てくるネコや 夕方、おばあさんとノビくんが 「ぽーい」「ぽーい」となげっこしながらかえるシーンも楽しい。
キャッチボールは、たんにボールだけではなかったのでしょう。
いつも楽しませていただいている長谷川さんの「ぱんやのろくちゃんシリーズ」、どれも人と人とのあたたかさが感じられます。
パンやのろくちゃん/作・絵:長谷川 義史/小学館/2006年初版
4コマ漫画が4つと、オムニバス風の話が4つと大サービス。
<おつかいにいくのまき>
カレーにつかう牛肉の買い物を頼まれたパンやのろくちゃん。急いで走って、すべってこけた途端に、「なんのにくだったけ にくにくにく」といっていると、八百屋おやの大将が「にんにく ひとつ まいどありー」。ろくちゃんにんにくを買うことに。「にんにくじゃ ないとおもけど まあ しょうがない」というと、しょうがをかうはめに。にんにくでもしょうがでもないと、ろくちゃんなみだがでてきて「はっくしょん」すると、こんでは、八百屋の大将が白菜もほしいのかと、白菜も買う。残ったお金で挽肉200gを買って家に帰ります。
でも、この買い物、大好きなぎょうざにばけます。
<しょうてんがいでおこられるのまき>
商店街の真ん中で、ボールをもって遊んでいると、けったボールが、魚屋の大将に、大当たりして、魚も飛び散り、大目玉。
泣きながら歩いていると、お菓子屋のおばちゃんは、あられを一袋、肉屋ではチーズ、花屋のおねえさんはみかんを、カレー屋のおじさんはリンゴを一つ、おまけに魚屋のの大将は、自転車でろくちゃんをおくってくれます。
<おみせばばんをするのまき>
ろくちゃん、はじめてお店番をすることに。
お客がこないので、パンの袋を頭にかぶり、店の前で踊り始めると、つぎつぎにお客さんが。
パンが売れすぎて、おやつで食べようと思ったクリームパンまでなくなって、ろくちゃんは泣き出しますが・・・・
<いぬをかいたいようのまき>
幼稚園の友達のゆきちゃんは犬をかっています。
ろくちゃんも犬をかいたいとお願いしますが、パン屋だから犬がお店でうんこしたりしてはいけないからいきものはかえないんだよと、おとうさん。
この話をきいていたおばあちゃんが、ふふふふと笑い出します。・・・・・
泣いていると心配したお店の人が、手をさしのべてくれる人情味のある商店。
ふだん行きつけのお店だと、客の状況も知っているお店の人が、いろいろ声をかけてくれます。なくしたくない風景ですが、いつまでもつものか。
八百屋さんには、「やさいをたべてべんぴをなおそう」という貼り紙がさりげなくあり、肉屋さんには「にくくっているか」の貼り紙。カレー屋は「インドのおっさん」という名前。4コマ漫画のおちも楽しい。
パンやのろくちゃん うんとね/2007年初版
”まいごになっちゃったのまき”では、今ではみられなくなったデパートの屋上ののりものにのって、うれしくていつのまにか迷子に。
店内放送で知ったおとうさん、おかあさんの顔を見た途端に涙もとまりますが、大変なことにきがつきます。
”えんそくのおべんとうのまき”では、炊飯器が故障して、遠足にもっていくお弁当は、お店のサンドイッチに。きになって動物園の楽しさも半減。でもお昼にお弁当を食べようとすると、みんなおにぎりやおかずと交換してとやってきます。
”ひとりでさんぱつにいくのまき”では、双子のやおやのたいしょうとさかなやのたいしょうからいわれて、、こっくりこっくり眠ってしまいます。目が覚めてきがつくと、前髪がとってもみじかくなっていて。
”ろくちゃんをびっくりさせるのまき”では、ある日、おじいちゃん、おとうさん、おかあさんもそっけなく、遊んでくれないなにかいつもと違っています。おばあちゃんにいわれて太巻きをつくる手助けを。
じつは、この日はろくちゃんの誕生日。ごはんの時間にはサプライズがまっていて、ろくちゃんははずかしくって、顔がまっかか。
お店のサンドイッチをお弁当にもっていくのが、なんかきはずかしくて、こっそりお弁当を食べようとすると、みんなは、ろくちゃんのおみせのサンドイッチは美味しいからと、おにぎりやおかずと交換してとやってくるところ、ろくちゃんの気持ちが痛いほどわかります。
ろくちゃんのおうちは、パン屋さんなので、表紙においしそうなブドウパン、フランスパン、コッペパン、ウインナーパンなどが描かれています。
パンやのろくちゃん でんしゃにのって/2009年
パンやのろくちゃん、おじいいちゃんと、おかあさんのおばあちゃんのいなかへ、お届け物もって、電車の旅です。
電車に のるとすぐ、おべんとう。三段重ねでおもわずよだれ。
そこへみかんがころがってきて、おじいちゃん、まきずしのお弁当箱をもって、若いお姉さんたちの席へいったきり(若返りの秘訣かな)。
二人だったのに一人旅になり、車掌さん「ひとりたびで ございますで ございますか。じぶんさがしの たびで ございますね」と、一人合点で感激しきり。
「コリ アンター、どうしたんだあ」と、カレー屋のおじさんも登場です。やれやれ一安心とおもっていると、カレーやのおじさん、すぐに退場です。
トンネルをぬけたら、のってきたのは、おやこのたぬき。つぎに「ここに すわらせていただきやしょう コン!」と、きつねのおやこずれ。くまもおさるもおやこずれ。
おいしい弁当も「人の ものは どうぶつのもの ポン」とたべはじめますから、ろくちゃん、泣き顔。でもどうやら、ろくちゃんの夢の世界だったようですよ。
裏表紙で、おじいちゃんといいきもちで五右衛門風呂にはいっていると、まどから のぞいていたのは?
軽妙なやり取りが楽しめました。
パンやのろくちゃん だからね/2012年初版
”ようちえんのおとまりがっしゅくのまき”では、ろくちゃんがカレー作りのため、たまねぎをきっていると、めにしみてなみだ。
ゆきちゃんが心配して声をかけてくれます。すいかわりで、地面をおもいきりたたいて、てがしびれ、またなみだ。ゆきちゃんが心配して声をかけてくれます。
おやすみのとき、おかあさんがこいしくなって、ちょっぴりなみだ。ゆきちゃんがまたまた声をかけてくれます。
あさ、おねしょで、ふとんがぬれています。するとせんせいがやってきて「あらあら ろくちゃん、昨日がんばって たまねぎ きってくれたから、こんなに なみだが でちゃったのね」と、すかさず見事なフォローです。
ゆきちゃんのやさしさ、素敵な先生とあたたかい幼稚園です。
えでかくしりとり遊びがでてくるのは”こどものひにしょうぶゆにはいったよのまき”。
カレー屋のおじさん、ろくちゃんを「コリアンター」とよびます。頭にタオルをのせたすがたはシリーズ一冊目にでてくる「インドのおっさん」です。
おかめ千げん/絵・文 飯原一夫/教育出版センター/1980年
出版社は徳島。阿波の民話絵本です。
ひろい海のうえに、ぽつんと一つ、かめがうかんだようにみえる島がありました。
港にはたくさんの船がでたり、はいったり。港のあたりにはたくさんの家があって「おかめ千げん」といわれるほどで、たいそう賑やか。
島には、古いお宮があって、そこにはこまいぬがありました。このこまいぬの目が赤になると、島は海の底に沈むといういいつたえがありました。
島の人は、お宮にお参りすると、かならずこまいぬの目をみて、なにもかわっていないのを、確認していました。
この言い伝えを悪用して一儲けを考えた海賊。こまいぬの目を赤くぬって、みんな逃げ出したところで、ゆっくり すきなものをいただこうという算段。
海賊の一人がくらいなかで、目だけでなくからだまで真っ赤に色をぬってしまいます。
こまいぬの目が赤くなったのをみて島の人々は、一人残らず何も持たず島を逃げ出します。
海賊たちは目論見通り、島の人が残していった宝物をあつめて、大喜び。
ところが急に空も海も暗くなって・・・。
こまいぬが全身赤くなる場面をのぞけば、全ページ モノクロで切り絵を思わせるタッチで描かれています。
地方の小さな出版社?の本は、なかなか見る機会がありません。頑張っている出版社があるのはうれしい限りです。作者も もちろん徳島の方です。
スプーンおばさんちいさくなる/アルフ・プリョイセン・作 ビョーン・ベルイ・絵 大塚 勇三・訳/偕成社/1979年
昔テレビアニメに「スプーンおばさん」があったというので、調べてみたら1983年4月から1984年3月まで、NHKで放映されていました。
あるばん、ふつうのおばさんが ベッドにはいってねむり、つぎの朝ふつうのおばさんのとおり目をさますと、なんとふつうではなくなっていました。ティースプーンくらいにちいさくなっていたのです。
おばさん「なるほど!小さくなっちゃったんなら、それでうまくいくようにやらなきゃならないわね」とひとりごと。
その日、掃除、洗濯、ひるごはんのパンケーキづくりとやることがどっさり。
まずはベッドから、ふとんにくるまってすとんと床に。
ネコに食器をなめさせ、犬には掃除。
洗濯は、雨、風、太陽に、文句をたらたら、ぶつぶつで洗濯もしてしまいます。
ポットやフライパンは、上手におだててパンケーキもつくりあげてしまいます。
百戦錬磨のおばさん、文句を言ったり、おだてたり、うまい心理作戦で、ティースプーンくらいにちいさくなったのをモノともしません。
ご亭主がかえってくると、もとの大きさにもどり、ふつうなおばさんに。おしゃべりもなく何事もなかったようにふるまうおばさん、こんな味は、おばさんでなければできません。
猫に皿をなめさせるのはいいアイデアですが、この皿つかったの?。
アニメでは、ご亭主はペンキ屋。この日は畑仕事でした。
作者、アルフ・プリョイセンは、ノルウェーの作家(1914年-1970年)。貧しい農夫の子として生まれ、早くから人にやとわれて農場で働き、学校には行けなかったとありました。
にじいろのはな/マイケル・グレイニエツ:作・絵 ほその あやこ・訳/ポプラ社/2000年
心があったかくなりました。
昨日雪だった原っぱに、花が一輪。にじいろの花です。
「おひさまにあえて とてもうれしいわ。うれしさを、せかいじゅうに わけてあげたい」
アリは水たまりをこえるため一枚
トカゲはパーテイ用に一枚
ネズミは、しっぽんのさきに、花びらを結んで うちわがわり。
トリは、むすめの誕生日に一枚
ハリネズミは、傘代わりに一枚
こまっている動物たちを手助けする にじいろの花。動物たちは花びらを一枚一枚もっていきます。
やがて、最後の一枚はかぜに。雪がなにもかも真っ白にうめつくし、また春には・・・。
だれかにうれしさ分けてあげたいという にじいろの花。花びらがだんだん少なくなっても、おしまいまで貫きとおします。
フレスコ画で描かれた絵は、本当にカラフルで色鮮やか。素朴な感じがするのも好感をもてます。
春の雪解け、夏の暑さ、秋の不順な天候、一面雪の冬と、季節感もばっちりです。
無償の愛というのでしょうか・・・。
かお/福田 繁雄・作/福音館書店/初出1978年
字はまったくなく、身近なもので顔を表現しています。
まず表紙はおいしそうなビスケットやクッキー、
落ち葉 パン クレヨン ボタン
切手、裁縫道具などなど。
自分でも工夫して顔をつくってみようかと思う絵本。
鼻はバナナ、目はリンゴ、口はイチゴのものもあります。
想像力を刺激してくれます。
スパイダー屋敷の晩餐会/メアリー・ハウイット原詩 トニー・ディテルリッジ・作 別所哲也・訳/文溪堂/2008年
スパイダーから
「わがやの居間にお立ち寄りになりませんかな」
「急な階段をあがってこられて、さぞやおつかれでしょう。愛らしいベッドでおやすみくだされ」
「食料棚にはぎっしりとおいしいごちそうがつまっているのです」「なんと聡明で思慮深いおかた。透き通る羽の素晴らしいこと、その瞳のかがやきのまばゆいこと! こちらには姿見がございます。さあ、ほんの少しこちらに歩みより、その姿をじっくりとごらんくだされ!」
といわれても愛らしいフライは、用心深くなんども断ります。
ことわりながらも姿を見せるフライに、とっておきの誉め言葉。
飛んできたフライは、あっというまにスパイダーにつかまえられて・・・。
スパイダーはクモ。まんまと罠にかかったムシ(チョウのようでもあり、トンボのようでもあり)のフライ。
「さあさあ、かわいい子どもたち。この本をよんだあなたは、くだらないあまい言葉には、心をうごかされないことを、願っていますよ」と結んでいます。
モノトーンで統一され、幽霊屋敷のような館が、はじめにでてきます。「けっこうです」と答えながらも外から部屋に誘導されていくフライです。
今は何があってもおかしくないご時世。甘言には注意するようにと言っても、罠をかける方もあの手この手ですから、むずかしい世の中です。