しろいやさしい ぞうのはなし/かこさとし/復刊ドットコム/2016年(初出1985年)
やさしくておとなしい、しろいぞう。しろいぞうは、弱虫で 負けるとべそをかきました。かくれんぼや 棒倒しで転んだり、したになると すぐに泣きました。
そんなしろいぞうが、ある日、へんなにおいがする、きっと火事だと、森のみんなに危険を知らせます。まもなく、あたりに煙が流れてきて、パチパチ 音を立てて 火事が広がってきました。森のみんなが逃げる中、走るのが遅く逃げ遅れたしろいぞう。まわりは 燃える火と ゆらめく炎で、真っ赤になりました。お母さんぞうは、水を吸い込み、しろいぞうのまわりに鼻で水をまきますが、三度目に 水を汲みに行ってかえったとき、さすがの お母さんぞうの足も、すっかり やけどをして歩けなくなりました。
お母さんぞうは、ものすごいいきおいで、しろいぞうのまわりをほって、穴を作ると しろいぞうをいれ、おかあさんぞうは そのしろいぞうのうえへ 自分のからだを かぶせるようにのせました。
やがて火事が消え、助かったぞうたちが見つけたのは、くろくやけたお母さんぞうでした。お母さんぞうも しろいぞうも 死んでしまったとおもって みんなは泣きましたが・・・。
しろいぞうは助かり、鋭い嗅覚で、ぞうがりや、ひでりのときに水や食べ物を探した しろいぞうは、やがて ぞうのむらの村長に選ばれます。
しろいぞうをたすけるお母さんの愛に、ジーンときます。
子どもたちに語りかける村長の言葉がすべてを物語っています。
「ぞうには、はなのほそいのや、ふとったのや、よわいものや、しわしわ 年とった者もいる。いろんなのがいるのが、ぞうなんだよ。このしろいこは、力が弱くて、走るのがおそくても、りっぱなぞうのこどもだし、なかまなんだよ」
ぞうを そのまま人間におきかえることができます。多様性を認め、個性を尊重することの大切さが 伝わってきました。