赤い鳥代表作集1/小峰書店/1998年
1919年「赤い鳥」掲載の作品。「赤い鳥」は、鈴木三重吉が創刊した童話と童謡の児童雑誌。1918年に発行され1936年廃刊。寄稿者には、芥川龍之介、谷崎潤一郎、泉鏡花、高浜虚子らの名前もみられる。
両親に別れた三人の兄弟が、都を目指します。大きい銀杏の木のところから、道が三本に別れ、一郎次は右の道、二郎次は真ん中、三郎次は右の道を進むことになります。ここまでくれば昔話風の展開。
右の道をすすんだ一郎次は左大臣藤原道世につかえ、盗賊や悪者をとらえる検非違使になります。
真ん中の道をすすんだ二郎次は、殿様に仕えるつもりが泥棒になり、頭が殺された後は、仲間の大将になって、多能丸となのり、家を荒らしまわります。
左の道を進んだ三郎次は、鬼と呼ばれた余命まもない加茂の長者にこわれ、一人娘のむこにおさまり、財産の半分を都中の貧乏人にわけ、仏の長者と言われるようになります。
わかれるとき、「兄弟がめいめい都で出世すれば、かならずどこかであえるにちがいない。」と、語り合った三人兄弟。その再会は?
加茂の長者から、金ばかりか娘の花子までさらわれたという訴えで、検非違使左衛門尉の家来が生け捕りにしたのは多能丸。
一郎次の左衛門尉が、花子を受け取りにきた加茂の長者をよく見ると、それはまぎれもなく弟の三郎次で、二人が両方からだきつくようにしてオイオイ泣くと、盗賊の多能丸も泣いていました。それは一郎次には弟、三郎次には兄にあたる二郎次にちがいありませんでした。
一郎次がどうして、藤原道世の家来になったのか、二郎次が盗賊になった経緯、三郎次が長者になった経緯が、だいぶ長いのですが、結末は、再会の場面でおわり、三人兄弟の驚きよろこび悲しみは、みなさん自分で考えてみてくださいと結んでいます。