オノモロンボンガ/アルベナ・イヴァノヴィッチ=レア・再話 ニコラ・トレーヴ・絵 さくまゆみこ・訳/光村教育図書/2021年
「ずっとずっと むかし、まだこのせかいが わかかったころ」と、はじまります。
ある年、雨が全く降らず、大地がからからにかわいて川のも水がまったくなくなって動物たちはこまっていました。
ある晩、カメが不思議な夢を見ました。夢の中に大きなうつくしい木がでてきて、これまでみたこともない おいしそうな実が いろいろとなっていました。ものしりのおばあさんに夢のことを話すと、まほうの木は 家の前の道をどこまでもあるいていったところにあり、実をもらいたかったら木の下で「オノモロンボンガ」といって、あいさつしなければならないと、おしえてくれました。
カメが歩いていくと、つよいライオン、動物の中でいちばん かしこいというゾウ、足の速いガゼルが、自分にまかせてと まほうの木を目指しますが、ライオンは、アリづかに、ゾウは木にぶつかり、ガゼルは、ぬかるみに足を取られ、木の名前をわすれてしまいました。
しかし、カメは、ゆっくりながら ちゃくちゃくと あゆみを すすめていき、まほうに木に たどりつきました。そして 噂を聞いて集まってきた動物といっしょに「オノモロンボンガ」、「オノモロンボンガ」、「オノモロンボンガ」と、くりかえすと、まほうの木が、バナナ、マンゴー、ナツメ、パイナップルなどをつけた枝を、ぐぐーっとしたまで おろしてくれました。
そして、だれもがすきな実をたべることができ、このときにやってきた 動物たちがはこんだ種から、やがて いろいろな 果物が そだっていきました。
アフリカ版「急がば回れ」でしょうか。
「アフリカ南部のむかしばなし」とありますが、依然読んだ「ごちそうの木 タンザニアのむかしばなし」と、モチーフが同じで、再話のさい脚色したものでしょうか。作者はブルガリア生まれ。フランスで20年以上音楽教師をつとめ、現在はドイツ在住です。
ごちそうの木 タンザニアのむかしばなし/作:ジョン・キラカ・作 さくま ゆみこ・訳/西村書店/2017年
ティンガティンガ・アートというこれまでみたことのない独特の画風の絵本です。
アフリカの昔話では「ん」からはじまる名前がよくでてきます。「ントゥングル・メンゲニェ」という木がでてきます。
むかしむかし、日照りで食べ物がなくなった土地にたわわに実のなる木がありました。
おなかがペコペコの動物たちは、かしこいカメに、どうやったら実が食べられるか、聞きに行くことにしました。
小さなノウサギが名乗り出ると「大きな動物にまかせなさい」と、ゾウとスイギュウがでかけていきます。
木の名前をおしえてもらったゾウが途中で転んでしまって、起き上がったときには、木の名前をわすれていました。
小さなノウサギがまた名乗り出ると「大きな動物にまかせなさい」と、今度はキリンとサイ、シマウマがでかけていきます。
ところがはらぺこのキリンが木の葉をたべているうちに、やはり名前をわすれてしまいます。
次には、ライオンとヒョウがでかけますが、やはり同じでした。
とうとうノウサギがでかけて「ントゥングル・メンゲニェ」という木の名前をわすれずに、かえってきます。みんなが、木の名前をいうと、実が雨のようにふってきます。
それからは、動物たちはいつでも木の実が食べられるようになって・・・。
大きくても何でもできるとはかぎらないし、小さくても大事な仲間だと動物たちはいいあいます。
「ントゥングル・メンゲニェ」は、「びっくりするほどすばらしいもの」という意味だといいますが、いつでも恵みの実を落としてくれる木は、すばらしい木にちがいありません。