三重のむかし話/三重県小学校国語教育研究会編/日本標準/1977年
毎年開かれる四日市祭りの、ろくろ首の大入道のいわれ。
四日市の町に、商いをする人たちがすみついところの話。
反物の商いをしている久六の店に、身の丈六尺もある大きな男が訪ねてきて、店で使ってくれという。久六が、小さい店で、若いもんを使ったこともないとことわるが、給金もいらないからといわれ店で使うことに。
大男がきてからというもの、ふしぎなことに久六の店に反物を買う客が増えはじめた。売り上げもぐんぐんふえ、大男がきてから三年もすると町でも指折りの大きな店になった。
久六が、うちの婿になって、この店を継いでくれるよう頼むと、婿になれるような男ではないとことわられる。
そんなことのあった次の年の夏、寝苦しい夜更けに、大男の部屋の前を通ると、障子におおきなかげが。首が胴から長く伸びて、頭がゆらゆら。おまけに、行燈の油を、なめていた。あまりのことに、久六は、気を失ってその場に倒れてしまった。つぎの朝、大男の部屋にはだれもおらず、着物がきちんとたたんでおいてあるだけだった。
四日市祭りの大入道は、どこへ行ったかわからん男の無事を祈ってつくられたのがはじまりという。
地元の人でないと、楽しさが伝わらないかも。