どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

人はなぜ はたらくのか

2023年12月04日 | 昔話(南アメリカ)

    大人と子どものための世界のむかし話6/ペルー・ボリビアのむかし話/インカにつたわる話/加藤隆浩・編訳/偕成社/1989年初版

 

 天と地をつくり、太陽や月や星に光をおあたえになり、人間や動物、植物をおつくりになった神さまは、自分の気持ちを伝える役目を、まちがって、うそつきのキツネに、おあたえになってしまいました。

 神さまは、「人間は裸で暮らすのだから、衣服はいらないだろう。そのかわり、こしから下がかくれるように、ひざまで羽をはやしてあげよう」といいましたが、神さまの声がよく聞こえなかったキツネは、「女たちは、はたらいて、衣服を作るように。指がはれあがり、胸が痛くなるまで、糸を紡ぎ、布をおるように。」といいました。

 また、神さまが、「人間は、畑に種をまかなくてよい。木の草もどんな植物も、しぜんに、おいいしい実をつけ、人間はかんたんに、それをとって、たべてくらせるだろう。トウモロコシの穂をとったあとは、小麦の穂が出てくるだろう。」といいましたが、キツネは、「人間は大地に種をまき、働いて、じぶんたちのたべるものをつくるように。また神さまのこどもである、ほかの動物たちのためにも、たべものをわけてやるように。」と、人間にうそをおしえました。

 神さまが、「人間は、一日一度の食事をすれば、それでじゅうぶんだ。」というと、キツネは、「人間は一日に三度食事をするように。」と、またうそをおしえました。

 ほかにも、人間がはたらかなければいけないことがらを、神さまに意向だとしたキツネ。

 神さまにふまんをもった人間たちは、かんたんに糸をつむいだり、布をおったりする方法はないか、教えていただきたいと、キツネにとりつぎをたのみました。「つぼのなかに、じぶんの糸巻き棒と、わずかの羊毛をいれておいたら、なにもしなくても、わたしが、きれいな布や、すばらしい糸にしてあげよう。」と、神さまは、おこたえになりましたが、キツネは、「わたしのことをあてにするなど、とんでもないことだ。女たちは一生のあいだ、糸を紡ぎ、布をおりつづけるのだ。」と、わらいながらいいました。

 いまの、この世のなかは、キツネのうその結果できたものなのです。

 「この世の中にある、まちがったことや、よくないことは、みんな、このうそつきのキツネのせいなのです。」といいますが、もしかすると、楽せずにくらしなさいというキツネは人間の恩人なのかも。「楽をする」ため、努力してきたのが人間ですからね。


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