重要な任務/星新一ショートショートセレクション/和田誠・絵/理論社/2003年
舞台は核戦争で人類が滅亡したか、はたまた地球温暖化で文明が失われたか、とにかくわずかばかり残った人類の物語。
狩猟を主とし、洞穴にすんでいた若者のボギが、毒蛇にかまれて死んでしまった父親からきいた、役に立つこと、何かを作る方法、危険や病気を防ぐ方法、さらに心をときみめかせ、想像をかきたてるというホンを探すに旅に出ます。
密林を抜け、野原を横ぎり、山をこえ、丸木舟で川をわたり、猛獣と闘いながら、一人の祈祷師の老人にであう。
その老人がいったこと。
「聞いたことはある。現物を見たことはないがね。だが映像とか幻覚とかーわしにはなんのことやらわからんがねーそれらが流行し、みなホンを捨て、使わなくなってしまったそうだ。なぜだかわからん。すばらしいものだったらしんだがね。」
何もかもデジタル化され、本の大切さが失われようとみえる現在の状況を痛烈に風刺しているショート。
ドキッとするところがあって、”あっぱれ”。