星磨きウサギ/那須田淳・作 吉田稔美・絵/理論社/2007年
銀河系外惑星開拓団のボランティアとして地球にやってきたウサギ。
現在だけでなく過去、未来をいききし、様々な人々の恋を成就させるために、一生に一度だけ星を磨きます。
初仕事は、北天に浮かぶポラリスの星磨き。雨あがりの塵や埃がすっかり洗い流されたあとの澄み切った夜空で少しづつ輝きをましていきました。
中世の背年からは大好物の初収穫のパラッチョ(にんじん)をもらい、星を磨くとアルタイルは輝くには輝いたのですが、すぐに元のようにくすんでしまいます。結婚も領主が決めるのでした。
未来からの呼び出しでいったのは超高層ビルの最上階。氷河期で人が移住したあとを買い占めたメガネ男の不満は、この町に住むもう一人の若い娘のこと。家を売ってくれたらこの町のただひとりの住人になること。家を売らないならと結婚を考えプロポーズしたが、いい返事がもらえません。フォーマルハウトを磨くと、ゆらめく炎の夜空に輝きます。
氷河期からもどって白髪のおばあさんに会います。
初仕事で、恋をかなえた人でした。しかしその相手は戦地で捕虜となり、戻ってきた彼とはうまくいかなくなり、別の人と幸せな生活を送っていたのです。
おばあさんの話を聞いたウサギは、こんどは自分のために星磨きをしようと、モップに水をたっぷり含ませて、軽やかに空を登っていきます。
ウサギは星磨きになる前は、牛乳配達をしていましたが、保安官をしているガールフレンドとひょんなことで仲たがいしていたのです。しかし、自分のため星磨きの結末はしめされずにおわります。
星磨きを呼ぶのは、誰かに背中を押してほしいのでしょうか。ウサギが願いをかなえてくれるのではなく、結局は自分次第です。
誰かを好きになるなるためには、ほんとうはたいした理由なんてない、愛のカタチはいろいろ、など おもわずうなずきます。
そして時代の中で自由な選択ができなかったこと、ひとりでは生きられないことも。