「眠れる森の美女」は、多くのバレエ団で上演され、アニメも1959年に全米に公開され、日本は1960年の公開。
この物語は、グリムでは「いばら姫」とされています。
あるところに子どもを欲しがっている国王夫妻がいたが、ようやく女の子を授かり、祝宴に一人を除き国中の12人の魔法使いを呼ぶ。
魔法使いは一人ずつ、魔法を用いた贈り物をします。宴の途中に、一人だけ呼ばれなかった13人目の魔法使いが現れ、11人目の魔法使いが贈り物をした直後に“王女は錘が刺さって死ぬ”という呪いをかけます 。しかし、まだ魔法をかけていなかった12人目の魔法使いが、「王女は錘が刺さり百年間眠りにつく」という呪いに変えます。
王女を心配した王は、国中の紡ぎ車を燃やさせてしまう。王女は順調に育っていくが、15歳の時に一人で城の中を歩いていて、城の塔の一番上で老婆が紡いでいた錘で手を刺し、眠りに落ちます。
呪いは城中に波及し、そのうちに茨が繁茂して誰も入れなくなる。侵入を試みる者もいたが、鉄条網のように絡み合った茨に阻まれ、入ったはいいが突破出来ずに皆落命します。
百年後、近くの国の王子が噂を聞きつけ城を訪れます。王女は目を覚まし、2人はその日のうちに結婚し幸せな生活をおくります。
ここでは魔法使いとしましたが、訳によって表現もことなります。例を挙げると
<子どもに語るグリムの昔話6/こぐま社/1993年> 運命を見通すふしぎな力を持った女
<グリム童話集1/岩波少年文庫/1997年> 仙女
<グリム童話集 上/岩波少年文庫/2007年> 仙女
<グリム童話集1/岩波書店> まじないをする女、つまり仙女
<グリムの昔話3/福音館書店/2002年> ふしぎな力を持つ占い女
<語るためのグリム童話3/小峰書店/2007年> 占い女
<完訳グリム童話3/筑摩書房/1997年> 運命を見とおすかしこい女
<こどもと昔話(創刊号)/小澤昔ばなし研究所/1999年> かしこい女
このほかにも巫女、妖女としている訳があります。
「仙女」だと、いまひとつで、「占い女」でも、もっている力が伝わってこないようなイメージです。といっても子どもは「占い女」であまり違和感がなかったようです。
・プチジャンとかえる(なぞとき名人のお姫さま フランスの昔話/山口 智子編・訳/福音館書店/1995年初版)
冒頭部同じシュチエーションの「プチジャンとかえる」では、妖精と表現されている。
食器が7つしかなく、招かれなかった年をとった妖精が、王さまとお妃に生まれた男の子をかえるにかえてしまいます。
・眠れる森の王女(ペローの昔ばなし/今野一雄・訳/白水社/2007年初版)
魔法使いは仙女とされ、8人が登場します。
眠りにおちた王女を悲しみ、王と王妃は王女に別れを告げず城を去ってしまいます。他の者たちは魔法により眠らされてしまう。
グリムとの大きな違いは王女は王子のキスで目覚めるのではなく、100年の眠りから覚めるときがやってきていたため、自分で目を覚まします。
また、グリム版にはない、2人の結婚後の話が続きます。王女は2人の子供をもうけます。しかし、王子の母である王妃は人食いであり、王女と子供を食べようとします。そこを王子が助け、王妃は気が狂い自殺してしまいます。
ペロー版では、百年たって、眠りから覚めた王女の服装について、やや時代遅れとあって、さらに二人を祝う音楽は、いい曲ではあるが、今ではもう演奏されなくなった曲と表現されて、時代をあらわしています。
昔話では時間があっという間に経過するのが特徴ですが、時間を感じさせるこうした表現は、ほかにみられません。
・ねむれる森の美女(サンドリヨン 世界むかし話 フランス・スイス/八木田宣子・訳/ほるぷ出版/1979年初版)
ペロー版ににていますが、妖精が出てきて、妖精のために黄金の小箱が用意されていましたが、50年以上も住んでいる塔から姿をあらわさなかったので、よぶことを忘れた妖精が出てきます。
時をストップさせたのも、王女が目をさましたとき、すっかり悲しくなるんじゃないかと、妖精が杖で、みんなを眠らせます。そして王女がながいねむりについているあいだ、楽しい夢をみさせてくれます。
王女と王子の結婚は、父親の王とお妃には秘密でした。というのはお妃は人食い鬼の本能の持ち主で、父の王が結婚したのは、ただ財産欲しさのためでした。
新しく王となった王子が隣の国と戦いをおこしたとき、残された二人の幼い子を食べようと画策する皇太后の話が続きます。
・ペロー版は1697年、グリムの初稿では1810年ですが、1634~1637年に出版されたナポリの詩人、ジャン・バティスタ・バジレの「太陽と月とターリア」が、いばら姫と話型がおなじという。
・カエルによる誕生の予告は、グリムのみ、仙女による祝福や呪いはペローとグリムのみという違いがあるという。
むしさん なんの ぎょうれつ?/作:オームラ トモコ/ポプラ社/2017年
「むしさんへ いいものあげるから のぼっておいで!」さあ さあ はやいものがちですよー
ハチの呼び声で、絵本を縦にみながら、とにかくのぼっていく 虫、虫、虫
その数50種類(虫に〇〇番とある意味がわかりませんでしたが、巻末に「おきゃくさんメモ」として一覧表がありました)。
とにかく虫好きの子にはたまりません。
虫たちの叫び声も動きも軽快そのもの。
ネコにねらわれ、雨が降ったり、スズメにねらわれたりと、上までのぼるのも大変。
のぼる面々は、アリ、テントウムシ、ダンゴムシ‥、ホタル、ハエ・・、スズムシ、カナブン・・、セミ、クワガタ、カブトムシ、トンボ、チョウ。
そしてムカデ、ゴキブリ、サソリなども。
なにがまっているか、わくわくしていると、のぼったさきには、なんと4ページにわたる とにかくでっかいスイカ。巨大なスイカに小さな虫がむらがって、最後はスイカのタネで「ごちそうさまでした」と、大満足です。
夏頃読みたい絵本でした。