どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ゆうかんなちびの仕立屋さん

2018年10月26日 | グリム(絵本)


    ゆうかんなちびの仕立屋さん/スベン・オットー・絵 矢川 澄子・訳/評論社/1982年


 布切れでジャムをぬったパンにむらがったハエを、ひとたたきで七匹を殺した仕立屋が、自分の勇ましさを町中、いや世界中にしらせようと世の中に出て行った仕立屋。

 類話もたくさんあるので物語の展開はそんなに珍しいものではありませんが、巨人とのかけひき、王さまに仕えて、大男二人、一角獣、いのししを退治し、王女と国の半分を手にした仕立屋でしたが、そこからすこしひねったラストがあります。

 仕立屋の寝言で、正体を知った若いお妃が、別れさせてくれるよう王さまに訴えると、王さまは、仕立屋が寝込んだら、踏み込んで縛りあげ、船で遠くに追い払おうとします。

 しかし若殿びいき(仕立屋)だった太刀持ちが、この企てを告げ口します。

 すると、仕立屋は「ひとうちで七つ、大男も二人ころし、一角獣もとれば、いのししだってつかまえた。そのおれさまが、外にいるやつらなんぞ、おそれるものか」とわめきはじめます。
 おそれをなした、外の人々はあわててにげだしてしまいます。

 こうして、ちびの仕立て屋さんは、そのまま一生、王さまとしてすごします。

 大男との力比べで、石の代わりにチーズを握りつぶし、夜大男が鉄の棒でひっぱたたいても翌日の朝はけろりとした仕立屋。じつはベッドがおおきすぎて、すみっこに寝ただけ。
 いのししは、礼拝堂に閉じ込めてしまいます。

 まわりが勘違いするだけなのですが。仕立屋も随分と調子いい男。

 自分を信じるのが大切なのでしょうか。

 絵本にしては文章が多いので、読み聞かせにはどうでしょうか?


”こびと”がでてくる話

2018年10月26日 | 昔話あれこれ

 ウクライナの「びんぼうこびと」は、すみつかれるとやっかいなこびと。
 こびとは幸せを運んでくれる存在であるとともに、やや やっかいな存在でもありそうです。

<北欧の昔話から(子どもに語る北欧の昔話/福井信子・湯沢朱実 編訳/こぐま社/2001年)>

・「屋敷こびと」(フィンランド)
  屋敷こびとは、三度も料理を食べさせてくれた料理人に、なんでもだしてくれる小さな小箱をプレゼントしてくれます。

・「トリレヴィップ」(デンマーク)
  名前をあてる話ですが、一晩でつむ二十本の糸を紡ぐと、大ぶろしきをひろげた娘のひとりごとがたいへんなことになります。
 娘は、屋敷のおくさまのところに呼ばれ、お屋敷で働くことになります。
 おくさまは、つむ二十本分の羊の毛をもってきて、明日まで糸をつむぐよういいつつけます。
 仕事はできそうにもありませんでしたが、赤いぼうしをかぶったこびとがやってきて、よめさんになってくれたら手伝ってやるといいます。

<グリムの昔話から(グリム童話集 上下/佐々木田鶴子・訳 出久根育・絵/岩波少年文庫/2007年)>
 白雪姫:七人のこびと
 命の水
 親指こぞう:親指くらいですから、こびとかな
 こびとのくつ屋:貧乏なくつやに幸せを運んでくれます
 金のガチョウ
 森の中の三人のこびと
 ルンペルシュティルツヒェン

<スイスの”こびと”たち(サンドリヨン/世界むかし話 フランス・スイス/八木田宣子・訳/ほるぷ出版/1979年)>

金持ちクラウスの話
 こびとたちは、たいへんな働き者。母親が病気の娘に、薬草を、純金にかわる食べ物をあげます。
 みどり色の外とう、小さなみどり色のぼうし、雪のように白い髪の毛、長い灰色のひげです。

キャサリーンと三人の小人
 ひとりぼっちの女の子が、こびとから火種をわけてもらいますが、どうしても火がつきません。もういちど火種をもらいますが、やっぱりうまくいきません。ところが次の日、起きてみるとピカピカ光る黄金の山がありました。

小人たちの歌声
 すばらしい歌声をくれたこびとですが、どこでうたうことをならったのか、たずねられた男が、根負けしてこびとの話をしてしまうと、男は美しい歌声を失ってしまいます。

小人のひみつ
 片目が見えない男に、こびとがおいしいお菓子をあげます。男は眠らされていたのでお菓子作りの秘密を知ることはできません。兄がでかけて、こびとの菓子作りの秘密をさぐろうとしますが?。

小人たちとぶどう酒のびん
 葡萄酒のびんをもっていた男が、こびとから「少し飲ませてくれ」といわれ、はじめはことわっていた男でしたが、熱心に欲しがったこびとに、葡萄酒をあたえます。こびとが飲みおわり、葡萄酒がのこっていないと思っていると、びんには葡萄酒がいっぱい。毎日飲んでも葡萄酒はなくなりません。
 しかし、おくさんから問われて、こびとのことを話すと、それからびんはからっぽになってしまいます。

 スイスのこびとは、ひみつを知られることが我慢できないようです。


<ルース・マニング=サンダーズの「こびとの本」から(世界の民話館1 こびとの本/ 西本鶏介・訳/TBSブリタニカ/1980年)>
          
 目にしたことがないものが多い。(グリムと重複するものを除く)

 フレデイとバイオリン:ノルウエー
 さわぎくの原っぱ:アイルランド
 いちごをつみにいった女の子:ドイツ
 小さいムクラ:アラビア
 びんの丘:アイルランド
 船長とこびと:デンマーク
 森の中の小さな男たち:ドイツ    
 はしばみ坊や:ウクライナ
 銀のすず;ドイツ
 ビリー・マクダニエルの冒険:アイルランド
 マイア物語:デンマーク
 もみの木:ドイツ 

                
 ”こびと”は小人と訳されているのもありますが、小人という表現はやや抵抗があります。

 ところで、意外と意識されていないのが、こびとの性別。

 女のこびとが存在しないという。しかし、こびとはかたちは「おとこ」であっても、男としての性を主張したり実現することがないという存在。

 日本の一寸法師や竹取物語のかぐや姫は、生まれは小さくても、結末などでは大きくなるが、外国のこびとは、”こび”とのままという違いは、どこからきているのかも興味深い。