りゅうおうさまのたからもの/イチンノロブ・ガンバートル・文 バーサンスレン・ボロルマー・絵 津田 紀子・訳/福音館書店/2016年
「浦島太郎」がいく竜宮城はもちろん海ですが、竜宮があるところがモンゴルというのがみそ。
ただ、水が絡むというのはモンゴルらしい話です。
モンゴル出身で埼玉に住むご夫婦が作者です。
なまけもののお兄さんと働き者の弟と、昔話の出だしです。
弟が鳥にねらわれた魚を助けると、次の日、タツノオトシゴにのったおじいさんがあらわれて「りゅうおうさまが おまえを よんでいる」といいます。
前日助けた魚はりゅうおうのむすめでした。
弟は、むすめを助けたお礼に、なんでもすきなほうびをやろうといわれ、りゅうおうさまの金の箱を
えらびます。箱には”みずのもと”がはいっていました。
弟が家に戻ると、家は立派になり草原のあちこちからは水がわき出ていました。
りゅうおうからけっして箱をあけてはならないといわれますが、話を聞いた兄が箱を開けると、水があとからあとから とどめなくあふれ、水がなくなった大地はひびわれ木も草も枯れてしまいます。
水がないと大地で生きていくことはできません。弟はもういちどおねがいすべく、りゅうおうのところへでかけます。
途中であったカエル、ヘビたすけた弟がりゅうおうのところへいくと、三つのことができたら、もういちど箱をやろうといわれ、九頭の馬から本物の馬を見つけ、九人のむすめから、りゅうおうのむすめを見つけ、さらに九個の箱から”みずのもと”のはいっている箱を見つけます。
弟が金の箱を枕にして一晩眠ると川は水をたたえ、大地が緑でいっぱいになります。そして、りゅうおうのむすめと豊かな草原で暮らします。
ヨーロッパの昔話では、竜宮がでてくるものにあったことがありません。動植物に精霊の存在を信じる民族と一神教の違いでしょうか。
開けてならないものをお土産にするのも、昔話の世界です。