観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

古いデータをひもとくこと

2014-06-01 17:29:24 | 14
4年 椙田理穂

 今年の5月は平年より暑い日が多く、私はすっかりバテてしまいました。そんな中、ゼミ発表の準備を行っていました。思わず準備中に「シカは私みたいに暑さに参ってないのだろうか」などと金華山島にいるシカの心配をしてしまいました。
 ニホンジカは5月下旬から出産期を迎えます。きっと今頃、金華山では子鹿が見られることでしょう。今年生まれた子鹿たちも名前がつけられ、記録に残るのだと思うと、自分は今とても貴重な時間を過ごしているのだなと思ってしまいます。
 私が卒業研究に使用している行動圏のデータは1990年から2007年までの17年間記録され続けたものです。1990年なんて自分が生まれる前のことで正直、想像がつきません。当たり前ですが1990年に生きていたシカはもういません。しかし、こうして記録として残っているのです。そして今年生まれた子鹿はこの記録に残っているシカのどれかと血がつながった血縁であるかと思うと、命のつながりというものを感じられずにはいられません。
 過去に生きたシカたちが命をつなぎ、現在のシカがいる。当たり前のことでありながら改めて思うととても凄いこと。だから、今年生まれた子鹿の記録が新たに付けられたことも凄いことなのだと思います。
 このことを自覚すると自分が卒業研究に使わせて頂いてるデータは本当に貴重なものなのだと改めて思います。この前のゼミで、行動圏を何年もしらべた研究発表のときに、高槻先生がおっしゃった
「行動圏が家系で継承されることが分かれば、死んでいったシカも本望じゃないかな」
という言葉が忘れられません。シカにそう思ってもらえるよう研究を頑張らなければと、改めて決意を強くした、今月はそんな月でした。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿