観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

ひっつき虫

2014-07-23 22:00:19 | 14
3年 富永晋也
「ひっつき虫」といえば、野原や森林などで遊んだ後に、ズボンにたくさんくっついていて、びっくりしたり、オナモミを自分や友達の服にくっつけて遊んだ経験は誰しもあると思います。私も小さいころに服にくっつくのが不思議で、ひっつき虫を集めたりもしていましたが、成長するうちにそのような気持ちも薄れ、気に留めることもなくなっていました。しかし、研究室に入って、種子散布のことを勉強して、この小さな果実がじつはとんでもないことをしているのではないかと思うようになりました。
 ひっつき虫は種子散布の中の動物散布にあたりますが、ベリーのように、食べてもらうことで種子を運んでもらうわけではありません。ベリーのようなのは動物に食べられるので、体内散布とよばれますが、ひっつき虫は体外散布とよばれ、かぎ状の毛やねばねばした粘液をつかってくっつくだけなので、動物側にとっては何のメリットもありません。くっつく仕組みは巧妙で、種の拡大写真を撮った時には、その鍵のつくりの精密さに驚かされました。クルマムグラとヤエムグラは肉眼ではあまりよくわからないのですが、拡大すると透明なかぎがたくさんついていました。ヤブニンジンは、採集したときズボンについてなかなかとれなくてたいへんだったのですが、拡大してみるとしっかりとした返しがついており、納得できました。


クルマムグラ


ヤマムグラ


ヤブニンジン

 こういう仕組みは長い年月をかけて植物があみだしたものであり進化の神秘を見せつけられたような気がしました。外国には直径15センチもある、鋭い角上の大きなとげをもっていて、動物の足にひっかかり、時には突き刺さって運ばれる「ライオン殺し」と呼ばれているものもあるそうです。こんな物騒なものまで進化の過程で生み出してしまう植物は、動けないぶん工夫を凝らしている「策士」なのだなと思いました。
 たいして気にも留めていなかったひっつき虫ですが、いまでは植物が種子をひろげるために、こんなにも巧妙な構造を発達させたことにとても興味をもつようになりました。これからこの策士のことを調べ、なにか発見をしたいと思います。

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