観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

フンとの出会いからはじまった

2015-03-01 11:45:06 | 15
4年 鷲田 茜

 野生動物に興味を持つようになったきっかけは、小学生の頃にカナダで大型の草食動物に出会ったことである。森を歩いていると、道端で動物がした糞を多く発見した。普通の子なら嫌がるところだが、なぜか私は喜んで糞を見つけていた。


カナダで動物のフンをみつけたときの私

「何の動物がしたフンだろう?」と興味深く糞を見ながら考えていたことを思い出す。その際に親に買ってもらった、動物と糞の写真が入った図鑑は今でも私の宝物である。野生動物とフンに出会った私は、それ以来動物が好きになり、将来の夢は獣医師になることと野生動物の保護をすることだった。
 高校2年生のとき、麻布大学祭に行き、野生動物学研究室主催のモンゴルの講演会を聴いた。そこで初めて高槻先生のことを知り、お話を聞いてから私は先生のファンになってしまった。そして高槻先生のいる麻布大学で野生動物の勉強をしたいと考えるようになり、先生が書かれた「野生動物と共存できるか」を何回も読み勉強をした。高校3年生の時に行った大学祭はC・W・ニコルさんを招いてのアファンの森の講演会であった。身体に障害のある子どもたちが自然の中で楽しそうに笑っているビデオを見て、感動して涙が出たことを覚えている。その時自然や生き物の大切さをとても考えさせられ、私もいつかアファンの森へ行ってみたいと感じていた。それまで犬や猫などの身近な動物の命に目を向けがちだった私は、そのときから野生動物や植物など自然全てのものの命を守りたいと考えが変わっていた。高槻先生との出会いが、私の進む道が大きく変わった時であった。
 麻布大学へ入学し、念願の野生動物学研究室に入室することができた私は、シカの糞を使って研究することとなった。小学生のころに興味を持った動物の糞をまさか大学で研究するとは思っていなかった。大学生になった私は糞に対し抵抗もなく、むしろ小学生の頃よりも糞を見つけると興奮していた。神津牧場には草地にシカ糞が大量に転がっており、糞を見ながら「この糞は新鮮だ!」「いい形をしている!」と子供のようにはしゃぎながら“好みの糞”を探していた。


研究対象としてフンをサンプリングする今の私

 同じ草地で採れた糞でも、ササばかり食べているものや、牧草ばかり食べているものなど、内容に違いがあった。シカによって牧場利用に違いが見え、とても興味深いものだった。普通の人にとっては汚いイメージである糞は私にとって“大事な動物の落し物”である。動物の姿・形を見ることができなくても、その動物が何を食べているのかということが糞から調べることができ、どのような場所で生きているのかということも分かる。糞を調べることの大切さを教えて下さったのも高槻先生である。
 植物のこと、虫のこと、野生動物のこと、高槻先生の下で多くのことを学んだ。野生研に入室してからの2年間は私にとってとても濃い時間で、自然の中で生き生きと活動していた気がする。高槻先生と過ごした時間は一生忘れることのできないものになると思う。先生と一緒に森を歩き植物の話を聞くことや、研究室の円卓で先生とお話しすることが大好きだった。また高槻先生と森を一緒に歩きたい、自然の話をしたい。
 小さな糞が転がる地面から鳥が羽ばたく空まで、いつまでも自然を観察していきたい。高槻先生、自然を観察することのおもしろさを教えていただき、本当にありがとうございました。

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