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【今週のウチシネマ】潜入捜査と友情、似て非なる映画

2005-12-03 | movie/【今週のウチシネマ】

クエンティン・タランティーノの作品に
「インスピレーションを与えている」映画を追いかけると、
掘り出し物映画のいい勉強になりそうですね。
たくさんありすぎてキリなさそう。

あまりタランティーノ映画は観なかったんですが、
ただ観るのはつまらないので、
『レザボア・ドッグス』と、『レザボア…』に影響を与えたという
『友は風の彼方に』を一緒に観てみました。

結局『友は…』が観たいだけなんですけどね、はい。


友は風の彼方に デジタル・リマスター版 [DVD]

『友は風の彼方に』は簡単にいえば《潜入捜査もの》

宝石強盗団を追跡していた潜入捜査官が殺され、
その上司であったラウ警部(ソン・イェー)は、
甥であるチャウ刑事(チョウ・ユンファ)に彼の後釜になり、
組織に入りこむように命ずるのですが、
過去の潜入捜査で仲間を裏切り、
厭な思いをしていたチャウは、前向きになれません。

そうしてるうちに、強盗団による事件が起こり、
古株のラウ警部は、署長の命令で、
この捜査班長を本庁からやってきた対立する若手のジョンに奪われてしまい、
酒浸りになります。

そして、死んだ息子の写真を見ながら落ち込む叔父の姿を見たチャウは
やっと決意を固め、組織潜入のためにたったひとりで動きだすのでした…。


前半は、このチャウの孤独な捜査を追っていきます。

結婚の約束までしていた恋人に仕事の話もできず、
激怒されるのを承知で、ただ「結婚は延ばしてほしい」としか言えないチャウ。

叔父から秘密の司令を受けて動いているために、刑事であるにもかかわらず、
ラウ警部を目の敵にしているジョンの部下に犯人一味と疑われて追われ続け、
だからといって警官だと明かせば組織の人間に殺されてしまう…
そんな状況の中で、銃の密売人としてなんとか強盗団の仲間として受け入れられます。

後半は、この強盗団の幹部ホー(ダニー・リー)とチャウが
心を通わす様子が描かれます。

ダニー・リーにユンファ、
わーい! 『狼』コンビですね。
男の友情にこの二人あり!
ですが、私は前半が特に好きです。

ジョンの部下から逃げるチャウの全力疾走は、他では見たことないくらい、
こっちまで息苦しくなるほどの素晴らしい疾走映像。

撮影監督が『インファナル・アフェア』のアンドリュー・ラウなんですよね。
さすが。
テレコを腹に巻き付ける場面や、ボーリング場の場面など、
チャウの一人シーンがとっても好きです。

何が物足りないかというと、
この作品、前半と後半で方向が変わってしまっているのがよくないと思うのですね。
なんだかとってつけたように友情物語になってしまって、
あれ?と思ってしまいます。

どうしても『狼』と比べちゃいますが、友情を描くなら、
はじめからダニー・リーや強盗団のキャラクターをはっきり見せるべきなんです。
死んだ潜入捜査官からの入りじゃなくて。
これを見ているとチャウの個人の事情の方が強く出ている。
だったら私はチャウがもっと孤独になっていく方がいいよ。
ひどい観客だけど(笑)。

その一方で、
『レザボア・ドッグス』は始めからそれぞれのキャラクターを分からせておいて
「裏切りものはだれか」見つけようと騒ぐ犯人たちという
到達点を置いているから見やすかった。

確かに単調で長く感じる部分もありますが、
一貫して重い映画にしていないところに好感を覚えます。



宝石強盗の仕事のために集められた男たち、
ところが、彼らの作戦は警察に囲まれていたことで失敗。

Mr.ホワイト(ハーベイ・カイテル)と、腹を撃たれたMr.オレンジ(ティム・ロス)が、
集合場所である倉庫に到着します。
ホワイトがオレンジを励まし続けていると
後からやってきたMr.ピンク(スティーブ・ブシェミ)は
「仲間の中に裏切り者がいる」と発言。
宝石店での大虐殺で堅気を大量に殺害したMr.ブロンド(マイケル・マドセン)も戻り、
それぞれがお互いを罵り、疑いながら、
彼らを集めたジョー(ローレンス・ティアニー)との出会いの回想が挿入されます。

有名なオープニング、「リトル・グリーン・バック」に乗せて
黒づくめの男たちが車に向かうスローモーション。
文句ナシにカッコイイです。

台詞が多く、舞台劇を思わせる映画ですね。
誰が裏切ったのかは早い段階で分かりますが、
分かったとしても、私は全然平気でした。
潜入までの経緯をちゃんと見せてもらって満足です。
なんだか潜入捜査官の立場で物語を見てしまいがち…(笑)。

他にもこの作品に影響を与えてる作品は多そうですが、
…「現金に体を張れ」とかね。
観ながら「どのへんが『友は…』のパクリなんだぁ?」
と思ってましたが、ちゃんと出てきました。
最後のあたり、まんま『友は…』の見所を使ってました

友情の見せ方としては『レザボア…』の方がうまく出来ています。
キャラクターの分かりやすさもこちらに軍配。
映画としてのまとめ方が成功してます。

ただこの手のストーリーの暗さを味わうなら『友は…』を薦めますよ。
ファッショナブルに犯罪ものを楽しむなら『レザボア・ドッグス』、
潜入の辛さを繊細な映像で味わうなら『友は風の彼方へ』。

さあ、どっちが好みでしょうか?


レザボア・ドッグス [DVD]

コメント (2)
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