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2015年5月31日

2015-06-08 01:37:39 | 癌の治療法

さまざまながんの放射線治療を改善するかもしれない発見
Discovery could improve radiotherapy for wide range of cancers



Journal of Clinical Investigationで発表された研究によると、放射線治療に加えてAKT阻害剤を投与することはさまざまな癌への放射線の効果を促進する可能性がある。

腫瘍はしばしば非常に急速に成長するため、癌細胞の一部は血液の供給が絶たれて酸素が欠乏する。通常、このような急成長は細胞に死ぬようシグナルを送るが、p53遺伝子という遺伝子に障害があるとシグナルは阻害される。p53の異常は癌の半分に存在し、そのような癌細胞は死なずに成長し続けることになる。

今回の研究では、酸素が不足した癌細胞でp53遺伝子に障害があると人体を癌から保護するのを助ける6つの遺伝子は活性化しないことが判明した。この6つの遺伝子のうちPHLDA3とINPP5Dという2つが欠けると、AKT遺伝子はいつまでもスイッチが入ったままになり、酸素不足にもかかわらず細胞が死なないようにする。

AKTを阻害するように設計された薬を腫瘍のマウスならびにp53遺伝子がない癌細胞に与えてから放射線を当てると、より多くの腫瘍細胞が死んだ。重要なことに、これらの遺伝子の活性の低さは様々な癌患者での生存率の悪化と関連する。これは、放射線治療にAKT阻害剤を加えることが癌を治療するための有効な方法である可能性を示唆する。



研究のリーダーであるEster Hammond博士(オックスフォード大学、Cancer Research UK)は、次のように述べた:

「この刺激的な発見は癌の進展における酸素欠乏の役割を明らかにするものであり、すでに癌患者で試験が実施されている阻害剤は様々な癌で放射線治療の効果を促進する可能性があることを示唆する。このジグソーパズルの重要な一部が、今も続く放射線治療を強める薬の開発努力を支えることを我々は期待する。さらにより多くの患者が、この癌治療の礎石から利益を得ることができるように。」

Cancer Research UKのシニア科学情報マネージャーであるEleanor Barrieは、以下のように述べた:

「放射線治療をどのように他の治療と組み合わせて使うかについての進歩は、何千という癌患者の生存を改善する可能性がある。患者の半分が治療の一部として放射線治療を受けるため、その効果を改善できるものが何であれ、患者にとっては重要な知らせになるだろう。」

学術誌参照:
1.低酸素によって誘発されるp53遺伝子は、AKTを通じてアポトーシスと放射線感受性を調整する。

Journal of Clinical Investigation、2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150531211040.htm

<コメント>
急激に増殖することで血管の形成が追いつかずに酸素が不足した腫瘍では、本来ならp53がAKTを抑制して細胞を死にやすくするという記事です。p53に変異があると低酸素でもAKTは抑制されず癌細胞は死ななくなりますが、AKTを阻害することで放射線治療でも多くの癌細胞を殺すことができます。

記事中のp53によって誘導される6つの遺伝子というのは、論文によるとINPP5D、PHLDA3、SULF2、BTG2、CYFIP2、KANK3で、そのうちINPP5DとPHLDA3が低酸素での細胞死では特に重要であるということのようです。