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書評 宮田恭子『ルチア・ジョイスを求めて』(1)

2011年10月31日 | 書評

大作家の娘の創造的な仕事

宮田恭子『ルチア・ジョイスを求めて』

  けっして読みやすい本ではない。だが、さまざまな支流が合流してやがて大河となるように、最後に読者は大いなる知的満足を得ることになる。

 二〇世紀最大の作家といわれるジェイムズ・ジョイスには、二人の子供がいた。

 一人は息子のジョルジオ、もう一人が本書のタイトルにもなっている娘のルチアである。

 ルチアは二十代で心の病に陥った。

 彼女に治療をほどこした心理学者ユングは、天才肌の父娘をこう称した。

「二人は川底に向かっていった。一人は足から落ちていき、もう一人は頭から突っ込んだ」と。

 狂気と正気の狭間をさまよったルチアは、小説家や伝記作家の興味をそそり、アメリカ作家のジョイス・キャロル・オーツも彼女をモデルにした短編を書いている。

(つづく)

 

 

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