越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

サルバドール・プラセンシア『紙の民』(4)

2011年10月15日 | 書評

 

 「悪女」にまつわるメキシコの伝説がある。

 「マリンチェ」の伝説だ。

 十六世紀のはじめ、エルナン・コルテスがアステカを滅ぼしたとき、敵将の通訳となったタバスコ族の女性だ。

 それ以来、メキシコの男たちは自分を裏切った女を「マリンチェ」と呼ぶ。

 自分自身の過ちや女遊びは棚に上げて。

 荒唐無稽なエピソードを積み重ねているように思えるこの小説で、メキシコ系の容貌の(背が小さく、名前からしてラティーノっぽい)作者を捨てて、別の白人男のもとに走ったガールフレンドを彷彿とさせる登場人物たち(ジプシーの血のまざったエリザベス、黒人の血のまざったカメルーン)が作者に対して批判の言葉を浴びせる。

 まさに「マリンチェ」の逆襲だ。

(つづく) 


 

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