* つぼみも膨らみ始め、毎日窓から眺めては花が咲くのを楽しみにしていた隣家のモクレンの大木が切られてしまい、がっかり。
モクレンはこの世と精神世界にまたがる、といわれる神秘的な木ですが、私がイギリスに来て最初に学んだシュタイナーのカレッジの庭にも、モクレンがありました。なぜ隣人が花が咲く前の木を切らなくてはならないのか、私には理解できませんが(アレルギー?)、人はそれぞれ違う価値観を持っているんだなーと痛感させられているところです。
第三十七話 わたしがアラン島にいったわけ
ある春休み、アイルランドの西海岸のアラン島をなずなと二人訪ねました。
ドキュメンタリー映画の父と呼ばれるフラファティの「アラン」を二十年も前に見て、ものすごい強風の中で海草を埋めて土を作って暮らしている人たちの生き方に圧倒されたのです。
アラン島は初期キリスト教の修行の地で、いくつもの崩れた教会を見て回りました。
こんな西のはずれの荒海の岩だけの島にどうしてこんなにたくさんの僧が集まったのだろう。という疑問は、果てしなく広がる断崖の上に疲れて寝転がっている幼いなずなを見ながら、どうしてわたしはこんな地球の西のはずれの断崖まで小さな子供を引っ張りまわしてきて、風に吹かれているのだろうという疑問と重なっていきました。
ところが、ユースホステルで、偶然、フィンドホーンで育ったという若い青年に会い、そのひとから、なずながよく育っていますね、といわれた瞬間、この一言を受けるためにここまで来たのだ。と思いました。
そのときまで、ずっと私自身の心が暗く、生活もめちゃめちゃという感じで、母親としてちゃんとしていないという負い目がいつもありましたが、その瞬間、背中の荷物が取り除かれたかのように感じたのです。
年月が経ち、ティーンエイジャーになったなずなが、ある日突然、「またアラン島みたいなとんでもないところに旅に行きたい」と言い出したときは、わたしもさすがに驚きましたけれど。
ある一言のために遠いところまで旅をすると言う話でした。
(間美栄子 2009年 3月15日)
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