それでは、13種類の要素技術の説明です。
それぞれの項目の検討方法は、条件や設計手法を照らし合わせながら、レベル0からレベル4(項目によっては、レベル2~3までです)に振り分ける作業です。各レベル毎にエネルギー削減率が設定されているので、最終的にその合計がどの程度のエネルギー削減
に繋がるのかが分かる
仕組みです。
つまり、2000年頃の標準的な住宅の年間エネルギー消費量が基準値(定数)として設定されているので、その基準値(定数)に対してどの程度の削減が期待できるかが分かる訳です。
①自然風の利用:自然風利用は冷房エネルギー削減
が期待できますが、周辺建物
や建物の形状
、外構
計画の工夫、開口部の位置、形状の工夫
が必要です。また、計画がしっかりしていても、住まい手が適切に解放する事も前提にしていますので、開口部の設置意義を十分に理解していただく説明
も重要になります。
まず、立地条件の確認です。建設地が(1)商業地域の様な過密地域か、(2)通常の住宅地か、(3)郊外の広々とした地域か、3つの内、1つを選択します。
次に5種類に設定された自然風の利用方法がいくつ取り入れられるかを検討します。
(1)直接的な自然風取りこみ方法:卓越風(その地域独特の風)の風上と風下に開口部が設けられているか(同じ向きに2か所開口部があっても、風が通り易いとは言えません)。風上側の外構計画は、流入空気の気温上昇を抑えた計画になっているか(風上側の窓付近のお庭がタイルやコンクリートでは、窓から入る空気が熱せられてしまいます。かたや、芝生や池が設けられていれば、空気の温度上昇を抑えられます)。ちなみに、1つの壁面に設ける窓の面積の合計は、大きい窓1つでも、複数の小さい窓でも、面積が変わらなければ入る空気の量はさほど変わりません。しかし、窓の大小の違いで、入ってくる風の速度が変わってきますので、冷涼感を感じたいのであれば、小さい窓が有効ですし、柔らかい風を入れたいのであれば大きい窓が有効です。
(2)間接的な自然風取りこみ方法:風を室内に取り入れにくい場合に行う工夫です。風が流れていく方向(風向きに対しての側面)に対して、サンルームや出窓、または壁を作って強制的に室内に取りこむ工夫です。
(3)屋根面を利用した自然風取りこみ手法:トップライト(天窓)等を設ける工夫です。ここで大事なのは、屋根が0寸から3.5寸勾配程度であれば、トップライトは空気の出口になりますし、それよりも屋根勾配がきつくなると、そのトップライトは空気の入口になるという事です。ですから、屋根勾配が緩ければ、北側の地窓から空気を入れて、南側のトップライトから空気を抜いたり、屋根勾配がきつければ、北側のトップライトから空気を入れて、南側の窓から空気を抜くといった検討が必要になります。
(4)温度差換気の利用方法:水が上から下に流れるのと一緒で、空気も暖まると上昇し、冷えると下に下がる特徴を利用する工夫です。例えば、トップライトがあれば、室内で温められた空気がそのままトップライトを介して外に流れて、新鮮空気が他から入ってくる計画などがあります。このメリットは、風が吹いてなくても(通りにくい場所でも)空気が流れるので、市街地で有効です。
(5)室内通風性能向上:居室単体の通風でなく、建物全体で通風を検討する場合の工夫です。例えば、室内建具は、ドアよりも引き戸の方が開けっ放しにしても邪魔にならないとか、欄間を設けるなどが考えられます。市街地の場合、日中で窓も室内建具も全開にした場合は、建物の換気回数は51回/hとなりますが、窓を開けても室内建具を閉めてしまうと換気回数は1.6回/hまで下がります。欄間があれば21回/hにする事ができます。ちなみに、網戸のあるなしで風は1割程度入ってくる量が変わります。
以上、建設地がどこで、5つの手法の内、いくつ取り入れたかでレベル0~3が決まります。これにより、冷房エネルギーが0%~30%の削減が得られます。
但し、窓の開け閉めに関しては、防犯対策も同時に検討する必要があります。トップライトについても、ガラスに当たる雨の音が気になりますので、就寝する部屋にはあまり向いていません。
こんなのが、13種類もあるので天竺を目指す気分に近いですが、設計ってこういう事だと思います。
本来これを含めてデザインと言うんですが、日本の場合、デザインの定義って格好だけの事を指してる気がします。ですから、日本の場合、こういう設計はエンジニアリング
という表現が近いんでしょうか。
つづく。
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