![]() | スティーブ・ジョブズ I |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
いわゆるベストセラーは、あまり進んで読まないのだけど、この本だけはアマゾンで予約していた。このさい電子書籍で購入しようかと思ったが、正直に言うと、今の日本で新刊本の電子書籍を買う気がおこらない。どうせならiPadで気持ちよく読みたかったのだが・・・
二巻本の一冊目は、ジョブズがアップルを立ち上げ、追われ、「トイ・ストーリー」がヒットするまで。
アップルを追われるまでの経緯は「アップル・コンフィデンシャル」やムックなどでおなじみの物語だが、細かなネタが面白く、一気に読めた。
とくに娘「リサ」のこと。成功しなかったオフィスコンピュータの「リサ」の名前の由来について本人がきっぱりと肯定したのはこれが初めてではないだろうか。
よくできた伝記がみなそうであるように、その人物の偉大さと同時に卑小さ、非情さ、性格的欠陥もまたよく描けている。
タイトルは、ジョブズの恋人の一人の認識である。
たしかに、多くのエピソードが物語るジョブズは、明白な性格の異常性を持っている。しかし、だからどうだというのだろう。
この本は、ジョブズという人物を描く本なのだ。ビジネス書ではない。まちがっても自分の仕事に活かそうなどと思ってはいけない。凡人たるわたしはそう思う。
ここには一人の男がいる。いつまでもハングリーで、いつまでも馬鹿げたことを思いつく男が。
二冊目が楽しみである。アップル追放、ネクストの失敗という苦い良薬を得たジョブズが、もっと世界を変えていくに違いない。
ここで誤訳の指摘をしていて面白い。
「stay foolish」
若者は馬鹿のままでいろ(小さくまとまるな)と言う表現が、実は「若者は既に馬鹿なんだから」と言う、皮肉で塗り固めたようなものであったという指摘が入っている。
なるほど、「大人しく過去を振り返って若者に教えを垂れる」などと言う殊勝さは、この男には似合わない。
本人に少しはそういう意識が出てきた年代になっても、やっぱりジョブズなわけだ。
彼やゲイツと全く対象的な原理に基づいて生きているRMS(ロバート・ストールマン)が、頑迷固陋な仙人であり続けるのと同じで、ジョブズのジョブズたる天然な傲慢さは「本質」なのだから治るわけがない。
私も2ヶ月で本を作ったことがありますが、ライトノベルとはワケがちがう、と。
「世界同時発売」にこだわるあまり誤訳が多いのはこまりますが、全体的にジョブズらしさがよく出ているので、これはこれでありかな、と<原作者の力量かもしれませんが、原書を読んでいないのでわかりませんが。
もうアメコミすら読めなくなってきてますが、原書にもあたってみようかな。