Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

「子どもが見ています。ルールを守ってください。」

2007年10月20日 | 那覇、沖縄
 今日は子どもの運動会である。幸いにも晴れと曇りが交互になってやってくる沖縄での運動会にとって最高の日和であった。開会式では校長先生が「フェアプレイで楽しい運動会を」と話した。その話のごとく、運動会は最終段階まできわめてフェアプレイで進行した。しかし、それは最後まで続かなかった。
 PTAによる玉入れ、ようするに親のための催しである。子どもの赤、青、黄色組の親が、それぞれ子どもと同じ色に分かれて、ただ玉入れをするだけのゲームである。もちろん、この勝敗も子どもたちの色別の点数に加算されることで、親たちはわが子の組の色を勝利に導こうと目の色を変えている。もう参加者たちの目はチーム色になっているのだ。
 さて始まる前に面白いアナウンスが流れる。
 「お父さん、お母さん、フェアプレイでいきましょう。」
 不思議なアナウンスである。なんだか親はフェアプレイをしないような表現である。
 ピストルの音が鳴る。親たちは一斉に玉を投げ始める。もうどの親の表情も真剣そのものである。パン、パンと終了のピストルが鳴る。しかし玉入れは止まらない。5秒ほど経過するとアナウンスが入る。
「やめてください。ボールを投げないで下さい。」それでも投げ終わらない。
すると次にはこんなアナウンスが流れる。
「子どもさんが見ています。もう終わっています。ボールを投げないでください。ルールを守ってください。」
それでも、まだ玉入れは続いている。すると児童のアナウンスが入る。
「ボールを置いてください。」我に帰ったように、ゲームは終わる。
 計三回戦、こんな状態は続いた。子ども達はそんな光景を眺めていた。最後に玉の数が集計されてある組が勝利した。しかしその色がコールされたとき、子ども達の喜びは冷ややかだった。ある意味、あらゆる観客はしらけていた。
「子どもが見ているから、ルールを守ってください。」というコールは当然にしても、この表現ですら、尋常ではない。子どもが見ていなければ、ルールを破っていいのだろうか?私は不安である。子ども達がそんな親たちを笑って受け流すことができるんだろうか?
 校庭に二重、三重にはられた万国旗がそんな親たちの姿をみて、苦笑いしているように強い風に吹かれてパタパタ・・・と音をたてた。そしてどの旗も口をそろえて「子どもの前では横断歩道渡っているんだろ?」と呟いた。