Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

ビニール傘

2007年10月01日 | 東京
 東京は二日続きで雨。しかも土曜日から気温が突然15度も下がって、バリと沖縄に馴染んだ私の身体はびっくり。日曜日は一日中震えていて、夜、那覇に戻ったときには、なぜかホッとした。普段は嫌気のさす那覇の暑さも今日だけは妙に心地いい。
 モノレールの浜松町駅で気づいたのだが、駅のゴミ箱には7,8本のビニール傘が捨ててある。まるで傘の忘れ物のようにコミ箱の横にたてかけてあったり、箱のでっぱりに掛けられていたりする。白、赤、緑など色とりどりのビニール傘が寂しそうに呟く。「どうして、私はここに置いていかれるの?」と。きっと、もう必要なくなったから。飛行機に乗るには長い傘は邪魔だし、きっと降りる空港は、今日の那覇のように雨なんて降っていないのだろう。ゴミ箱の横には、売店があって、そこにはビニール傘が400円で売られている・・・。
 気になって羽田空港のゴミ箱も眺めてみた。やっぱり、浜松町駅と同じで、ビニール傘が数本、捨てられている。外から見る限り、どの傘もまだ新品に見える。「私たちはこの後、どうなるの?」と悲しげな声が聞こえてくる。「あと1日であなたは、大きなプレス機で潰されてこの世から消えていくんだよ」なんて、勇気のない私にはとても言えない。ビニール傘の悲しき末路。
 沖縄行きの最終便、JTA58便に搭乗する。私はこの便が好き。乗客の多くは東京を訪れた沖縄の人たちが多く、搭乗しただけでもうここは沖縄。皆、たくさんの荷物を持ち込んで、少ない棚に荷物を入れようとする。「その荷物って、大きさオーバーだよね?」なんて誰も言わない。空港で買ったたくさんのお土産がきっちり棚に納まる。すると、最後に荷物の前に何人かの乗客がビニール傘を横にして置いた。私の荷物の前にもちょっぴり濡れたビニール傘が二本。「沖縄ってどんな所だろう。早く見てみたいね。」 そんな心躍った声が上から聞こえてくる。
 濡れていたってかまわない。だって東京で買ったビニール傘をわざわざ機内手荷物で沖縄に持って帰るのだから。なぜだか、それが嬉しくて急に暖かい気持ちになれた。そのせいか、東京の寒さなんかもうすっかり忘れてしまう。