Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

美ら海水族館の「ガチャガチャ」

2007年10月07日 | 
 来週、ガムランの舞台がある海洋博記念公園の海洋文化館で、公演の打ち合わせがあって、沖縄北部へ家族と2時間のドライブをする。子どもはもうウキウキである。なんといっても海洋博公園にはあの有名な美ら海水族館があるからだ。私もここには何度来ただろう?しかし息子はきっと私の倍はここを訪れているはずであるが、それでもなおここに行きたいのである。
 その息子は、水族館も好きなのだが、今、彼がはまっているのが出口にある水族館オリジナルの「ガチャガチャ」である。すべては水族館にいる生物のミニチュアで、たぶん十数種類はあるはずだ。息子はそのうちの10種類くらいを集め、残りの数個を獲得するために、ここに来るたび200円の「ガチャガチャ」に挑戦するのである。彼には収集癖があり、それはまさしく私の悪いところを受け継いでしまっている。正直、このところは水族館が見たいのか、「ガチャガチャ」がやりたいのかよくわからないくらいだ。
 私は舞台の打ち合わせを終え、「ガチャガチャ」のある水族館の出口のソファーに腰を下ろして息子がやってくるのを10分ほど待った。息子と同様、「ガチャガチャ」にはまっている子ども達のオンパレードで、200円を入れて、レバーをひねる真剣な表情、そして出てきたカプセルを握り締め、真剣に中を覗く子ども達の表情、そしてその直後に起こる悲喜こもごものドラマ・・・。もう見ているだけでも微笑んでしまうような風景である。
 さて、息子の登場である。彼はすぐに「ガチャガチャ」をやろうとしない。遠くから、見守り、そしてしばらくすると近づいてケースの中に入っているカプセルを凝視する。そして「覚悟はできた」といわんばかりに、200円を投入し、おもいきりレバーをひねる・・・。長いパイプを通ってコロンとカプセルが落ちてくる。あっという間に拾い上げて、一瞬、その中身を覗くやいなや、今日一日の中でもっとも寂しそうな顔をする。もう彼が何を言わなくても、その中身がすでに自分の持っているものだということは父親にはお見通しである。「これ、クリスマス会の景品にしよう」と息子は悲しそうにつぶやく。
 「じゃあ、お父さんも1回やってみようかな」なんだか息子の顔を見ていると、こちらまで寂しくなってソファーを立つ。200円を入れて、レバーを回す。結構、力を入れないとまわらないことを初めて知る。「お父さん何?」と息子は私の左手に隠されたカプセルを覗き見た。そして大声を上げた。
 「お父さん、すごいよ。これぼくの持ってないイトマキエイだよ!」もう子どもは狂喜乱舞である。なんだか、私はとてつもなくすごいことをやり遂げたような、そんな気分になって水族館を後にした。きっと、これからも息子はガムランの演奏があるたびにここにきて、「ガチャガチャ」に挑戦するんだろう。まあ、いいさ。誰にだってささやかな楽しみはあるのだから。