Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

美空ひばりの格好よさ

2019年07月30日 | CD・DVD・カセット・レコード

 美空ひばりが亡くなったのは1989年6月末だから、もう30年前のことになる。1989年といえば、もうぼくは20代後半だったし、美空ひばりが亡くなったことはハッキリ覚えているが、正直なところ、そのときは美空ひばりがどんなにすごい歌手かなんてことはほとんど知らなかった。もちろん歌謡ショーにはよく出演していたけれど、演歌を歌うおばさん歌手くらいな認識しかなかったことは、今思えば本当に恥ずかしい。
 美空ひばりの凄さを思い知ったのは、たぶん大学教員になってポピュラー音楽論の講義を始めてからだったと思う。戦後の日本のポピュラー音楽史を学ぶうちに、美空ひばりがあらゆるジャンルを歌いわけるオールマイティーなとんでもなく驚くべき歌手であることがわかったのである。アメリカから入ってきたポップスから新しいリズム、リンゴ追分のような民謡調の歌、さらには、コテコテのド演歌まで、どれも別人のように歌い上げるのだ。今では、「美空ひばりを知らなければ日本人ではありません」、なんて授業で言うようになってしまっている。
 最近、20代の卒業生が、美空ひばりのダニー・ボーイがすごくいい、とyoutubeの音源を聞かせてくれた。これがまたすばらしい。ダニーボーイはイギリスの民謡であるが、多くの人に歌われ、演奏される名曲である。その切ない歌詞を、実にみごとに歌い上げているのである。おもわず私は研究室に戻ると、amazonで美空ひばり、ダニーボーイと検索語を入れて、思わず購入してしまったのがこの写真のCD。2枚組のジャズスタンダードである。なんとA列車で行こう、までが日本語で歌われている。しかも本格的なのである。
 美空ひばりは、演歌を歌うおぼさんなんかじゃあない。この人は、ぼくの中では日本のポピュラー音楽界の中で最も恰好いい歌手であり、この人を超える歌手が今後、日本に誕生するかといえば、私の答えは今のところ「否」である。