駅まで歩いていく途中の道端に猫が横たわっていました。朝とはいえ暑い一日が予感される日差しの強さでした。猫が横になっている場所は大きなビルの陰になっていましたが、それでもアスファルトはかなりの熱さになっている筈です。怪訝になった僕は回り込んで猫の顔をのぞき込むと、鼻・口の辺りから血が流れていました。まるで寝ているかのように穏やかな表情で、体には目立った外傷もありません。初めて見掛けた猫でしたが何とも気の毒な気持ちになり、その猫が元気だった頃の姿を想像してみました。たとえ相手が人間であれ猫であれ何かのきっかけで出会ったならば、その相手が生きていた証が欲しくなるものです。
『ワーキング・ホリデー』はホストとして働いている主人公の元に自分の息子だと名乗る男の子が突然やってくる話です。主人公はホストになりきれない中途半端な人物ではあるものの、この息子の訪問をきっかけに一生懸命生き始めるのです。ちょっとした二時間ドラマのような展開は読むに心地良く、しかし生きている充足感もそこそこ得られる作品でした。
僕が出会った不幸な猫が『ワーキング・ホリデー』の父子同様に精一杯生きることができたのであれば、これ以上嬉しいことはありません。
『ワーキング・ホリデー』はホストとして働いている主人公の元に自分の息子だと名乗る男の子が突然やってくる話です。主人公はホストになりきれない中途半端な人物ではあるものの、この息子の訪問をきっかけに一生懸命生き始めるのです。ちょっとした二時間ドラマのような展開は読むに心地良く、しかし生きている充足感もそこそこ得られる作品でした。
僕が出会った不幸な猫が『ワーキング・ホリデー』の父子同様に精一杯生きることができたのであれば、これ以上嬉しいことはありません。
ワーキング・ホリデー 坂木 司 文藝春秋 このアイテムの詳細を見る |