物欲王

思い付くまま、気の向くまま、物欲を満そう

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ミノタウロス

2007-08-01 01:24:58 | 
以前日経の書評で高評価だった『吉原手引草』今年上半期の直木賞受賞作となりましたね。同書は文体も構成も面白いし良い本だとは思うものの、そこまでみんなで称えるべきものかと言われるとどうもしっくりこなかったりします。日経の書評と僕は感覚的に相容れないものがあるのでしょうか。

とかいいつつも、またもや日経の書評にあった「美文家が綴る最低な男の話」というような文言が目にとまり、日経書評に推されて購入する第2弾として『ミノタウロス』を読んでみました。

ロシアのとある地方の資産家の息子が歴史の流れに巻き込まれながらどんどんと堕落していく姿が、(残念ながら僕の好きな文体ではないものの)かなりしっかりした文章で書き綴られています。ストーリー自体の面白さも十分味わえるテンポの良い作品という印象です。苦労を重ねて財をなした父親とは似ても似つかず、主人公はやがて殺人・強姦・強奪を意にも介さない人間の形をした獣へと成り下がっていきます。設定している時代・場面のせいか、ごく当たり前に殺人・強姦・強奪が主人公の周りで起こるので、人道的な観点では異常な堕落具合なのですが、主人公の落ちぶれていく軌跡が結構ナチュラルに受け止められてしまいます。あまりに自由度が高い状況下では平常心では異常と思えることも案外理解できてしまうものなのでしょうか。あるいは殺人やテロなど本来であれば耳を疑うようなニュースに慣れてしまった現代人の僕が読むからそう感じてしまうのでしょうか。後者なのであれば作者のねらいは見事に的中で、僕も半人半獣の仲間入りです。

個人的には丸山健二氏の『夏の流れ』のように社会規範の中での微妙な悪意の方がぞくっと来てしまいます。


ミノタウロス
佐藤 亜紀
講談社

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コメント
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