この年末年始休暇の平日分について、有給休暇の取得を会社から求められている人もいるようだ。ネットの相談サイトには「有給休暇がすぐになくなってしまいます」「このような有給休暇のとりかたは有りでしょうか?」という疑問が投稿されていた。
カレンダー上は「平日」ということであれば、こうした有給休暇の取り方を会社から指示されても、逆らうことはできないのだろうか。それとも、こんな指示をする会社は「ブラック企業」と考えたほうがいいのか。労働問題にくわしい野澤裕昭弁護士に聞いた。
●取りたいときに「自由に取れる」のが原則
「年次有給休暇(有給休暇)の取得は労働者個人の権利です(労基法39条)。理由のいかんを問わず、取りたいときに自由に取れるのが原則です」
野澤弁護士はこのように述べる。では、年末年始に有給休暇を取るよう、会社が指定してもいいのだろうか。
「労働者の権利である有給休暇の取得時期について、使用者が自由に指定することはできません。使用者が勝手に、正月休みを有給休暇に指定することは、労働基準法に違反します」
ただ、一定の条件を満たした場合、会社が有給休暇取得の時期を指定できる制度があるようだが・・・。
「『計画年休制度』のことですね。
これは、一定の条件のもとで、労働組合もしくは労働者の代表と使用者が、書面による協定を結べば、労働者個人の年休権行使を拘束することができるという制度です」
それでは、やはり会社が年末年始を「有給休暇の取得時期」として指定しても、問題ないのか。
「たしかに、こうした労使協定で『正月休みに有給休暇を消化する』と定めれば、それは有効です。
ただ、『計画年休制度』はあくまで、有給休暇取得を促進するためを設けられた制度です。
有給休暇がなかなか消化できない理由として、同僚や上司、職場の雰囲気への気兼ねから取得をためらう傾向があることから、この制度が導入されました。
『正月休みに有給休暇を消化する』といった労使協定を結ぶことが、有給取得を促進するという計画年休の制度趣旨に合致するのかは、おおいに疑問です」
●会社自体が正月休みなのに「有給休暇」を取得する意味は?
そもそも、年末年始はオフィスや店舗自体を閉めている会社も多いだろう。
年末年始に「有給休暇」を取得せよ――こんな会社は「ブラック企業」と呼ぶべきか?