無法者頭と特別な乗騎

バイクとTRPGの記録

食屍鬼島 -14(ネタばれ注意)

2023年12月09日 | 食屍鬼島
光りの女神像の守りをロタールらファルジーンの戦士に任せ、3人はケイザ山にある敵の本拠地を目指す。火山噴火の前兆のような激しい地震が続き、火口からは大量の灰が噴出する。浮遊する灰が集まって雲になり、空を横切って弧を描くすさまじい火山雷を発生させる。太陽は隠れ周囲は暗くなり、100フィートより先を見通すことは出来ない。
3人のケイザ山への接近を阻むため、ガタノソアの小根が出現する。これを返り討ちにしたうえ、ケイザへの供物に捧げる。


ケイザ山は島の中心であり、大いなる古きものが復活するための焦点であることを強く感じる。崩壊した小道や崩れた聖堂に倒壊した塔は初めて島に到着した日のことを思い出させる。あれからそれほど経ってもいないというのに、なんと変わってしまったことだろう。
揺れる地面はあちこちがひび割れ、硫黄の蒸気が噴き出している。道は山腹に新たにできた大きな裂け目に行き当たる。裂け目の中は蒸し暑く、重なり合ったあらゆる形と大きさの岩が行く手を妨害する。身をくねらせながらどうにか通り抜けると、進みやすい古い洞窟に出た。
ゆっくりと上昇する溶岩が、部屋の床を侵食している。わずかに一人が通れるだけの幅の床が、溶岩の上に浮いている。踏み外したら間違いなく溶岩に飲まれて一巻の終わりだ。
《飛んで行きましょう》
クレシダはグラトニーとザローに飛行の呪文をかけ、自分はザローの肩に乗った。
洞窟は上へと伸びている。この辺りは最近の地震でできたようだ。通路の幅も天井も不規則な形をしており、待ち伏せするのにうってつけの地形だ。やはり敵が待ち伏せていた。クトゥガに穢されたアースエレメンタルが2体だ。
《このままやり過ごしましょう》
空を飛んでいる3人は敵の頭上を飛び越えて先へ進む。


目の前には開口部が見える。そこから吹き込む熱くて悪臭を伴う噴気が一歩ごとに強くなってくる。胸をむかつかせる臭気とは別の何か、ぼんやりとした、それでいてまぎれもなく有害な悪意を感じる。
「どうやら外に出るようですね。向こうからとても強い気配を感じます」
《気をつけましょう》
開口部はケイザ山の中央火道に突き出た岩棚につながっている。岩棚の真下は泡立つ溶岩だ。中央にはおぞましい触手をもつなにかがあります。その形は心臓が鼓動するたびに吐き気を催すほど変化する。忌まわしい触手の傍らにはアルウィイ執政官が立ち、グラトニー、ザロー、クレシダの3人がここにいることが面白いと感じているような表情を浮かべている。

「お前たちは何ゆえここまで来た? 信仰か、正義か、それとも友愛ゆえか?」
「あえて言うなら、英雄になるためです。私たちには運があるそうです」
そう言いながら、ザローはグラトニーとクレシダにウィンクをした。
「なるほど、お前たちもまた狂っているのだな。私は力が欲しい。例えそれが、悍ましい恐怖によるものでも構わない。理屈ではないのだ。”狩り立てる恐怖”よ、奴らを喰らえ!」
ガタノソアの守りの巻物の力があっても、ガタノソアの旧き力の顕れに対して長時間対抗し続けることは難しい。アルウィイと”狩り立てる恐怖”の直接的な脅威でも全滅しかねない。取り得る作戦はひとつ。先ず、古き力の顕れを溶岩へ、ケイザの力の源に突き落とし消滅させる。そのうえで、アルウィイと”狩り立てる恐怖”と戦うか逃げるかを決めればよい。
ザローが前進しアルウィイの気をそらす。その間にグラトニーが”旧き力の顕れ”に近づき、岩棚から押し出す。
「重いな、もう一押しだ!」
邪魔をするザローを魔法で拘束したアルウィイはグラトニーが突き落とそうとしている”古き力の顕れ”を魔力で押し戻す。
「おっと、俺は押しくら饅頭は得意だぜ」グラトニーの最後の一押しで、邪悪の焦点は沸き立つケイザの懐に抱かれるように、溶岩へ沈み、一片たりとも残さず溶解した。
「まったくもったいない」ネヅコが呟く。
「貴様許さん!」アルウィイが叫び魔力を集中させる。
《私を忘れないでね》光輪を浮かべたクレシダが多数の怪光線をアルウィイ目がけて投射する。
「邪魔だ!」アルウィイの死神の指がクレシダの心臓を鷲掴みにする。
《クッ!》気力を振り絞り、アルウィイの呪文に抵抗するが、体中から力が抜けるのを感じる。
一方、グラトニーは上空から襲い来る”狩り立てる恐怖”の精神攻撃に打ちのめされた挙句、噛みつきで飲み込まれてしまった。このままでは怪物の胃液で消化されてしまう。
「おいおい、グラトニー。こんなところで死なれたら私は一生こいつの腹の中になるじゃないか」ネヅコはぼやきつつ、以前吸収した癒しの魔法を解き放つ。
「一般に獲物を飲み込んだ生物は、食い物に反撃されるとは思ってはいないものだ。どのような怪物でも、それが神話的生物であっても、身体の中で暴れられたら、生理的反射運動で吐き出すに違いない。ことに神話では数多の英雄が神に等しい怪物の腹から脱出している。これは神の階位を登ったことの象徴として語られることが多いが、古代に実際に成された偉業を伝える逸話と解することもできる…」
ネヅコが滔々と語るあいだ、グラトニーは怪物の胃袋をかぎづめで掻き毟り、毒牙で噛みつくなどの大暴れを演じた。たまらず”狩り立てる恐怖”はグラトニーを吐き出した。
「砂肝を内側から喰らうとは、なかなかの体験だったぜ。改めてお前の手羽先を喰わせろ!」
激しい戦いが続く中、ガタノソアの化身である”旧き力の顕れ”を飲み込んだケイザ山の溶岩は沸き立ち、勢いを増して上昇してくる。

《まずいわね、敵を倒したのはいいけど、逃げる暇が無さそうね》
クレシダは岩棚のすぐ下まで上昇してきた溶岩を確認してから、ザローとグラトニーを振り返る。そして火山灰が覆う空の向こうにある、見えない月を見上げた。
”狩り立てる恐怖”にかぶりついていたグラトニーが顔を上げ、粘液にまみれ、原始的な恐怖を呼び起こす神蛇のような皮をもつ灰色の肉を飲み込む。
「素晴らしい喉ごし。淡白で繊維質の肉は鶏肉のようで、粘液に含まれる異国的なスパイスの風味が絡み付き、力強さを感じさせる。すごいパワーを感じる」
「グラトニーさん、これが最後の晩餐ですね。残念ながら、私にはご一緒できません」
「いや待て…、感じるぞ…、パワーを。奴のパワーが俺に流れ込んでいる。今なら飛べる!」

グラトニーは食屍門の力で、”狩り立てる恐怖”の力を吸収し、飛行の魔法を発動した。
ファルジーンの生存者たちが、粉々になった城壁の残骸の上で空を見上げている。人数は大幅に減少したが、ガタノソア教団に勝利するために、彼らは屈することなく立ち上がったのだ。群衆のすべての顔に戦いの深い悲しみと肉体的な辛さが証として浮かんでいるが、両目に宿った決意は、教団を打倒するためにはいかなる代償を払うこともいとわず、そして再びそれを払う気であることを告げています。そして彼らは噴火するケイザ山から飛び立つ小さな光を見つけ、緊張の面持ちで見つめる。
己の内に目を向けると、気づかずに止めていた息を吐き出したかのように、胸が軽くなったように感じる。徐々に近づくその光点がグラトニー、ザロー、クレシダの3人であることが分かると、沈黙を破ってためらいがちな歓喜の声が上がり、それが集まって、より大きな、思い思いの歓声になる。「勝った! 大いなる古きものを倒したんだ! 今宵、誰もがファルジーンのチャンピオンだ!」
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苦悩、あるいはもしかすると恍惚の叫びが、虚空を通じて意識をいつもの洞窟へと導く。その洞窟は、ここ最近の探索で多くの時間を費やしてきた、無数の地下の洞窟やトンネルとほとんど変わりがない一一苦悶に身を丸める人影を除いては。
チラチラとまたたく不明瞭な姿が、膨張して奇形化した顔を向けた人影と1つになる。残虐さと恍惚に大きく口を引きつらせた、見間違えようもない顔だ。ルンジャタの。
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