国際医療について考える

国際協力という分野に興味を持つ人たちとの情報共有、かつ国際協力に関する自分としてのより良いありかたについて考える場所。

腸チフスワクチン [Typhoid fever Vaccine]

2009-08-12 | Vaccine 各論

腸チフスは罹患率が高く、全世界で毎年約 2,100 万人が発症。
2000 年には全世界で216,000 人が腸チフスにより死亡。
http://www.ivi.int/program/tr_domi_typhoid.html
抗菌薬がない時代の腸チフス致死率は10-20%
1948年以降、クロラムフェニコールで致死率は1%以下に改善
1970年代にクロラムフェニコール耐性菌がメキシコとベトナムに出現。

S. Typhi(Ty21a株)に対する経口弱毒生ワクチンが1980年代に認可(6歳以上を対象)
注射のVi (for virulence) 多糖類ワクチンが1990年代初頭に認可(2歳以上を対象)

Viワクチンは1回接種(筋肉注射)
1988年にフランスで承認、現在100カ国以上で接種される。
免疫記憶を顕在化させないのでブースター効果なし
最適な接種方法は確立していないTyphim Vi®であれば0.5 mLを2年毎に接種推奨
対象は2歳以上
Typherix®であれば0.5 mLを3年毎に接種
S. Paratyphi A or Bに対してはVi 多糖類を発現しないため予防効果なし
防御効果が61%(95%CI 41-75%)、2-5歳では防御率80%(95%CI 53-91%)
ワクチンを未接種でも接種群との居住で防御率44%(95%CI 2-69%)
[Dipika S. NEJM 2009;361:335-44]
3年間の経過観察で55%のワクチン効果[Klugman KP. Vaccine 1996;14:435-8]
フランス軍人のアウトブレークにおける報告では3年以上前にViワクチンを受けた兵士は、3年以内にワクチンを受けた兵士と比較して2倍の罹患リスク[Michel R. Eur J Epidemiol 2005;20:635-42]
2014年のCochrane reviewによると、Viワクチンの予防効果は約10万人での評価において1年目に2/3に(69% 95%信頼区間63-74%)、約20万人での評価において2年目に約半数(59% 95%信頼区間45-69%)、約1万人の評価においても約半数(55% 95%信頼区間30-70%)だった。
副反応として発熱や発疹との関連は認められなかったが、局所反応をより多く認めた。
[Cochrane Database Syst Rev. 2014.]


Vi capsular polysaccharide (ViCPS) ワクチンは常温でも効果を持続しやすいため、25℃なら1週間、37℃でも1日以上保存可能[MCQ 3rd S3-82]


Ty21a経口生ワクチンは1日おきに4回接種
出発の1週間以上前からワクチン接種を開始
ワクチンは冷蔵保存(2-8℃)して、空腹時に内服、1時間は食事を避ける
接種対象者:6歳以上
S. Paratyphi Bに対しても交差防御で49%のワクチン効果[Levine MM. CID 2007;45:Suppl1:S24-S28]
S. Paratyphi Aに対してはワクチン効果なし[Simanjuntak CH Lancet 1991;338:1055-9]
腸溶性カプセルを使用した4回のワクチン接種で7年後のフォローアップで62%のワクチン効果
通常の服用で、3年間で50%のワクチン効果との報告も(MCQ 3rd S3-86)
2014年のCochrane reviewによると、Viワクチンの予防効果は約10万人での評価において1年目に2/3に(69% 95%信頼区間63-74%)、2万人を超える評価において、接種後2年間に約1/3から半数に腸チフスに対する予防効果を認めた(1年目35% 95%信頼区間 8-54%, 2年目58% 95%CI 40-71%)が3年目には有意な予防効果を認めなかった。
消化器症状の副反応との関連は認めなかったが、発熱を予防接種群により多く認めた。
[Cochrane Database Syst Rev. 2014.]

初回接種
カプセル1個を1日おきに4回(day 1, 3, 5, and 7)内服
最後の内服から1週間で免疫効果
スケジュール通りに内服しないと効果が低下する
ブースターは5年毎に最初から4回の内服を繰り返す
抗菌薬と併用すると効果が低下する恐れがあるため、抗菌薬を中止後少なくとも24時間はワクチンの服用を避ける(添付文書)
下痢症状があると同様に効果が低下すると考えられる
低温に保つ必要があるためお湯と一緒に服用するべきでない
便中にS. typhiは排出されないとされる

Viの結合体ワクチンであるVi-rEPAワクチンが現在開発段階にある。
予防効果は、1万人を超える評価において、接種後2年間に反芻から96%に腸チフスに対する予防効果を認めた(1年目94% 95%信頼区間 75-99%, 2年目87% 95%CI 56-96%)。
2回の接種において、プラセボと比較して発熱や局所反応等、副反応の増加は認められない。
[Cochrane Database Syst Rev. 2014.]


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« HIV患者の母乳栄養と母子感染 | トップ | ヒトパピローマウイルスワク... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Vaccine 各論」カテゴリの最新記事