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莢膜多糖体肺炎球菌ワクチン(成人用肺炎球菌ワクチン)PPSV23

2010-06-24 | Vaccine 各論

[歴史]
最初の肺炎球菌ワクチンはSir Almroth Wrightによって1911年に開発された
多糖体ワクチンは1940年代に市場に出たが、抗菌薬の出現により、流通しなかった
耐性菌の出現もあり、14価のPPSVが1977年に米国で承認
1983年に14価から現在の23価に(PPSV23)

ニューモバックス®(23価価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)は国内で1988 年 3 月 29 日に輸入承認が与えられ、1988 年 11 月 10 日に発売された。
1992 年 8 月 28 日に、「脾摘患者における肺炎球菌(23価価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)による感染症の発症予防」について健保等一部限定適用が認められている()。
生産性向上のため抗原を変更したニューモバックスNP®は製造販売承認年月日:2006 年 10 月 20 日、薬価基準収載年月日:1992 年 08 月 28 日(健保等一部限定適用)、発 売 年 月 日:2006 年 11 月 29 日
脾臓摘出患者における保険適応については、初回及び再接種の限定はなく、医学的な妥当性をもって判断される者と考えられる。 

ニューモバックス®は、肺炎球菌感染症に罹患する危険率が高く、また重篤になり易いハイリスク群患者の感染予防を目的として、米国メルク社が開発し製造した 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(肺炎球菌の莢膜由来成分からなる不活化ワクチン)。肺炎球菌中で高頻度にみられる 23 種類の莢膜型の肺炎球菌を型別に培養・増殖し、殺菌後に各々の型から抽出、精製した莢膜ポリサッカライドを混合した液剤。
肺炎球菌莢膜血清型分布の研究により、日本における肺炎球菌感染症の約 8 割に対処しうることが確認されている。また、臨床試験において全 23 莢膜型に対する抗体価上昇倍率の平均は 4.4 倍であり、2 倍以上の有意の抗体価上昇を示したものは各型別に 73~100%(平均 89%)となり、かつ優れた忍容性が確認されている。

ニューモバックス®NP について(MSDインタビューフォームより
米国メルク社はニューモバックス®の生産性向上を目的として、ワクチン製造設備を新たに建設するとともに、肺炎球菌培養工程の培地とポリサッカライド精製工程において動物由来原料をほとんど使用しない新たな製造方法(新製法)を開発した。すなわち、従来は培養工程においてウシ由来原料(心臓、骨格筋、脂肪組織、骨髄、結合組織、乳)及びウサギの血液を用いた培地を、製造工程においてウシ由来の酵素(膵臓)を使用していたが、新製法ではいずれも使用していないことから、本邦では、この新製法が BSE 問題の影響を可能な限り排除するための対応として申請準備が進められた。なお、種菌を調製する前段階でウシ由来成分(ヘミン)が使用され、製造工程で用いられる酵素を製造する際にウシの乳由来成分(カザミノ酸)が使用されている。日本で行われた無作為二重盲検試験において、新製法による製剤の免疫原性はニューモバックス®と類似し、安全性は同程度であることが確認されている。本邦では、新製法による製剤は、ニューモバックス®からの切り替えを明確にするため、販売名をニューモバックス®NP に変更した。また、海外の状況に従い本剤の再接種の要望が高まる中、2009 年に 4 学会(日本感染症学会、日本化学療法学会、日本呼吸器学会、日本環境感染学会)連名で「肺炎球菌ワクチンの添付文書記載事項一部改訂についての要望書」が厚生労働省に提出された。2009年10月18日開催の第3回安全対策調査会で関連事項に関して検討された結果、再接種にかんする添付文書の改訂が了承され、2009年10月に「接種不適当者」の項から「過去に、含有莢膜型の組成のいかんにかかわらず多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者」「放射線、免疫抑制剤等で治療中の者又は接種後間もなくそのような治療を受ける者」が削除された。ただし、「接種上の注意」接種要注意者(接種の判断を行うさいに際し、注意を要する者)において過去に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者、重要な基本的注意に過去5年以内に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者が追記された。また、「用法・用量に関連する使用上の注意」に「ただし、医師が必要と認めた場合には、同時に接種することができる(なお、本剤を他のワクチンと混合して接種してはならない)。」が追記された。


侵襲性肺炎球菌に対する中等度の効果はあるが、血流感染を伴わない肺炎(NPP)に対する効果は低く、NPPは10倍以上多い
侵襲性肺炎球菌感染は乳児に最も多いが、細胞性免疫を介さないため、免疫原性が低い
一方コンジュゲートワクチンはT細胞を介した免疫原性であるため乳児にも免疫原性が高く、再感染によるブースター効果も期待される
→ 2000年、PCV7が乳児の定期接種化
→ 2010年、PCV7からPCV13へ変更

23価の肺炎球菌成人用ワクチンは肺炎球菌莢膜ポリサッカライド(ニューモバックスNP®)
肺炎球菌中で高頻度にみられる23種類の莢膜型の肺炎球菌を型別に培養・増殖し, 殺菌後に各々の型から抽出、精製した莢膜ポリサッカライドを混合した液剤である
種菌を調製する前段階でウシ由来成分 (ヘミン) を使用し, 製造工程に用いる酵素の製造にウシの乳由来成分 (カザミノ酸) を使用している
接種が推奨されるのは臓器移植患者, 無脾症, 慢性疾患, 高齢者, その他の仕事等により肺炎球菌に対するリスクがある人
有効期間は1回接種後に約5年
ワクチン接種の3週間後までに免疫が構築されるが, 2歳以下では反応が乏しい

T細胞(細胞性免疫)とは独立して、B細胞を通じて免疫を構築する
胚中心形成ができないため、高い抗体価を長期的に維持したり、記憶反応によりブースター効果を期待したりすることができない

費用対効果
厚生労働省審議会の報告書に記載された試算によると、仮に65歳の方全員が成人用肺炎球菌ワクチンワクチンを接種した場合には、肺炎関連の医療費が削減されることで、保健医療費全体では5115億円の医療費削減効果が期待されている(肺炎球菌ポリサッカライドワクチン 作業チーム報告書

23価ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の追加接種に関して
5年後の2回目の追加接種は、免疫不全がある19-64歳でワクチンを初回接種した人には推奨(3回目は推奨されない)。
65歳での初回接種は全員に推奨されるが、65歳以上での追加接種は推奨なし。
http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/wk/mm5934.pdf

日本のガイドラインでは65歳以上での追加接種対象。
http://www.kansensho.or.jp/topics/pdf/pneumococcus_vaccine.pdf

免疫不全者における侵襲性肺炎球疾患リスク(100,000人当たりの罹患者数)
健康な人: 8
脳血管障害:26
糖尿病28
呼吸器疾患:32
腎疾患:41
肝疾患:52
アルコール:59
HIV/AIDS: 173
血液悪性疾患:186

成人の免疫不全者には最初にPCVを接種、8週間以上の間隔をあけてPPSVの接種が推奨される
PPSVの接種間隔は5年以上

既にPPSV接種歴があれば1年以上の間隔をあけてPCVの接種が推奨される、それ以外は上記同様


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