蜜柑のつぶやき ~演出家の独り言~

NPO法人劇空間夢幻工房の演出家/青木由里の日々の呟き。脚本執筆・役者・ワークショップ講師も兼業する舞台人日記♪

劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演「ISHIN version.2024」

NPO法人劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演
タイトル 『ISHIN ~狼たちは最果てに~ version.2024』
脚本・演出 青木由里
出演 青木賢治/栗生みな/村松沙理亜/清水まなぶ/井田亜彩実/導星ゆな 他

日時 2022年9月8日(日)11:00~/15:30~
会場 飯山市文化交流館 なちゅら 大ホール
チケット予約フォーム:https://www.quartet-online.net/ticket/ishin2024

皆さまへ感謝を込めて晴れやかに開催‼
どうぞお楽しみに‼

コンテクスト

2014年07月09日 23時17分16秒 | 日記
連日稽古が続いている。

どんな刺激を与えれば役者にハッとする演技を生み出してもらえるか…
そんなことを考えながら、毎日稽古に取り組んでいる。

今日の帰り際、もっちゃんに

 指導方法、変えました?

と、聞かれ

 変えたというほどではないけれど
 出来るだけ演者に質問するようにしている

と答えた。

役者に自分で考え想像して
行動を生み出して欲しい…と思っているから。

ここで言う行動には、台詞(言葉)を吐くという行動も含まれる。

自分で考え想像したことなら忘れないのでは?
自分で考え想像したことなら保存して再利用可能なのでは?

せっかく稽古を重ね覚えた演技を忘れてしまうのは勿体ない。
どうしたら自分の引き出しに保存できるか
どうしたら自分の引き出しから自在に取り出せるか…

と考えた結果、今は
自分で考え想像して行動に移せるように…
ということに重点を置き稽古を進めている。

行動を生み出すのに必要なのは動機付け。

では、動機とは何か?

人間は欲求が動機となり行動を起こす。
人間は感情が動機となり行動を起こす。

感情から欲求が生まれ、行動を起こす。

欲求は大きく分けると二つに象徴される。

 ①得たい欲求
 ②避けたい欲求

この二つは、下記の感情から湧き出る欲求と言っても過言ではない。

 ①(快楽を)得たい
 ②(痛みを)避けたい

簡単にいえば、人間の行動の根源は
快楽を求めるか、痛み(嫌なこと)を避けるか…なんじゃない?
ここではひとまず断定は避けておこう(笑)

なぜ、人間は対話をするのか?
何かを伝えたいからだよね。
では、伝えたい「何か」とは何か。

それが、感情であり欲求なのではないか。

状況を説明するにしても
言い訳をするにしても
裏側には何らかの感情が潜んでいる。

仕事の報告すること一つにも
何らかの感情があるとしたら…

と考えると、言い方や態度を想像しやすいのではないか?

理由(意味)のない行動もある…という人もいるかもしれない。
が、実は深層心理を探ると行動には必ず理由があるんだよね。
役を演じる側は、この理由を知る必要がある。
なぜなら、理由がわからなければ行動を想像できないし
想像できなければ行動することが出来ないから。

禅問答のようになって来ちゃったけど
簡単に言うと…

行動には全て感情・欲求が潜んでいる。
まずは、台詞の裏側に潜んでいる感情や欲求を
読み取ることが肝要なのだ。

舞台役者は、基礎的な発声や滑舌
そして、身体能力も必要。
が、そればかりに囚われると
感情や欲求を意識出来なくなってしまう。

基礎をオチャノコサイサイで出来るようになれば
それに囚われる必要がなくなる。
また、感情や欲求を自在に表出できるようになれば
身体にも意識が向けられるようになる。

どっちが先か?
うーむ…
「鶏が先か、卵が先か」みたいなものだ。
どっちも必要、どっちもなければ成立しない。

あ、鶏と卵のどっちが先かについては
進化論で「卵」という結果が出ているらしい。

演技の場合、卵にあたるのは感情・欲求かもね。
これは役者であろうがなかろうが
全ての人間が持っているものだから。

そう考えると、どんな人でも
役者になれる可能性がある、ということになる。

しかし、実際に演じてみるとわかるが
そう生易しい世界ではないんだよね。

それは何故か?

自分の気分ではなく、その役の適切な感情や欲求を
自在にコントロールし、適切なコンテクストに沿って
表出するのが役者だから。

つまり、感情表現も技術の一つなのだ。
何でもそうだが、高度な技術は磨かねば修得出来ない。

「コンテクスト」という言葉の元々の意味は
「織り(text)合わされた(con)もの」

何と何が織り合わされた台詞なのか、行動なのか…

辞書にはこう記されている。
【context】(文章事柄の)前後関係, 文脈, コンテクスト;背景, 状況, 場面

言葉の裏側にあるコンテクスストを読み取り
演出家や他の役者が想像するコンテクストと
すり合わせることが出来るようになるには
どうすれば良いか。

平田オリザ氏は、コンテクストの意味合いをより広げ
「その人が見えている世界」というニュアンスで用いている。

自分の物差しを知り、他者の物差しを知ること。
その役が見えている世界を明確に想像すること。

人は、同じものを見ても感じ方も捉え方も違う。
そこにある事物や事象や出来事は同じでも
実は全く異なる世界を見ていると言っても過言ではない。

そして、シーンの空気を創るのも役者の責務。

日常、空気を読むという行為は
多くの日本人が行っているだろうけど
空気を創る、という体験を重ねている人は少ない。

このシーンはどんな空気がしっくり来るんだろう?
緊迫感か、恐怖か、狂気か、歓喜か、悲哀か…

どんな空気が欲しいか具体的に提示するのは演出の仕事。
けど、実際に空気を創るのは役者の仕事。

一般参加の皆さんに対しては、空気が創られるように
導いていくのが演出家の仕事。

どう行動するか、どう台詞を言うかに終始する前に
考えてみて欲しい。

自分は何を見ているのか?
自分は何を聞いているのか?
自分は何を感じているのか?

空気を創るためにどんな声が必要か?
空気を創るためにどんなしゃべり方が必要か?
空気を創るためにどんな行動が必要か?
空気を創るためにどんな感情の表出が必要か?

自分が知覚する「周囲の世界」を明確にして
動機と行動を生み出し
その世界の空気を創る…それが演技!

今後も役者陣には質問を投げかけながら
前提条件と動機、シーンの空気創りに重点を置き
より実りの多い稽古時間になるよう
テンションを上げて取り組んでいこう(^_-)-☆