ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

私が死ねば     

2010-01-05 21:29:16 | 寓話集まで
私が死ねば世界は終わる
世界には
六十億の世界があって
みんなそれぞれ微妙に違う
六十億の世界は
一人が死ねば一つづつ終わる

毎日
たくさんの違う世界が終末を迎えている
結末は無
何も無くなる
世界は無くなる

だからどうした?
どうでもいい
どうなっても構わない
すべての希望は叶わない

いくつかの希望は叶う
私が死ねば希望は終わる
終わって 終わり

何かが残っても
私には残らない
私には意味がない
すべての意味が無意味に変わる

だからどうした?
どうでもいい
どうなっても構わない
すべての希望は叶わない

死んでどうなることでもない
ひとりが死んだ
それだけ
死にたい人は死ぬのがいい
それが本望だ
絶望だとしても本望だ

   ※

ねえ、人間って、なんで生きているんだろう?
何故生まれてきたんだろう?
なんで創造されたんだろう?
葦かびのように蔓延ってきたんだろう?
蛋白質から単細胞生物から
複雑なシステムが生かされてきたんだろう?
いなくなったからって
何がどうなるんだろう
人間同士が悲しむだけで
人間同士が苦しむだけで
ほかには何が困るんだろう

親の前には死ねない
子どもが子どもであるうちは死ねない
妻が悲しむから死ねない

でも
歌が歌えない
踊りが踊れない
人前でセリフがしゃべれない
詩を書くこともできない
論文も小説も書くことができない
知識を熱情を教えることができない
生きている土地の魅力を語れない
美味しいものを食べられない
美味しいものを語れない
珈琲を飲めない
珈琲の雰囲気を語れない
煙草を一服できない
ことばの読みを語れない
ことばの情景を語れない
ことばの背景を語れない
身振り手振りができない
生きている謎を語れない
地球の謎を語れない
宇宙の謎を語れない

見るまえに跳ぶ
こともできない

でも
私が歌わなくとも
誰かが歌う
私が書かなくとも
誰かが書く
私が語らなくとも
誰かが語る

それぞれに違う世界を

なんで命はつながっていくのか?
連綿と続いているのか?
なんで
子どもは生まれるのか?

何故
私は生きているのか?

生まれなくたって良かったのに
地球に
人間なんていなくて良かったのに

なんで
わたしは生きているのか?
この
世界を
私の世界を

あなたの世界を









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