モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

森の線香花火ネムノキの花。森の宝石オオミドリシジミ。希少ウラキンシジミ、オオスズメバチ。崩壊寸前の妻女山松代招魂社(妻女山里山通信)

2022-07-02 | アウトドア・ネイチャーフォト
 今日も朝からピーカン。8時過ぎに撮影現場に到着。前回より暑くなりそうです。陣場平で朝は24度でしたが、10時には27度になりました。ルイボスティーを500ml、氷水を1リットル持って行きましたが、どんどんなくなります。体力的にはかなりきつい撮影です。合間には有害帰化植物の除去や落枝の処理、林道の修理もします。撮影機材以外に山仕事の道具も必要なので車で登るのです。本当はジムニーぐらいがいいのですが、3ナンバーのSUV。現場で出会った人にはよく登れますねと言われます。百回以上登っているのでタイヤの置所とかアクセルの微妙な調整も知っているのでなんとか登れます。仲間と登る時は、注意点を言います。他の方には、車を傷つけるか最悪壊れますよと言いますね。おすすめしません。

 ネムノキ(合歓木、合歓の木)が咲き始めました。例年より少し早めです。夜になると小葉が閉じて垂れ下がる就眠運動を行うことで眠る木。
「昼は咲き 夜は恋ひ寝(ぬ)る 合歓木(ねぶ)の花 君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ」 紀女郎(きのいらつめ) 『万葉集』巻八1461
(昼に咲いて、夜には恋しい想いを抱いて寝るという合歓の花を私だけに見させないで。ほら、君もここに来て見なさいな):紀女郎が大伴家持に贈った歌なんですが、紀女郎は年上の人妻で、戯奴というのは目下の人を呼びかける言葉だそうです。人妻が若者をからかったのか、誘ったのか。背景を知ると、なんとも意味深な歌です。
 二人の関係については、非常に面白い考察があるので、興味のある方は一読をおすすめします。
紀女郎と大伴家持

 ネムノキは高さ10m以上になります。花は葉の上に咲くので、下からはよく見えないことがほとんどです。ここは林道下の斜面に根本があるので間近で見られるのです。化粧の刷毛の様でもあり、線香花火の様でもあり。繊細な花です。なんとも形容し難いかすかに甘い香りがします。赤松と同様に排気ガスには弱いようで、我が家の山の大木は高速道路ができたら数年で枯れました。
 ネムノキの花はマゼンダピンクとホワイトですが、普通に撮るとバックが黒か緑になってしまいます。それだと映えないのです。上のカットの様に青空が入ると凄く映えるのです。そのためにアングルを微妙に変えたりして何十カットも撮影しています。これを炎天下でやるのは頭がクラクラしてきますが、妥協できない非常に大事なことなのです。色の織りなす魔法。

 オオミドリシジミは、前回より少し増えていました。それでも例年より少ないと思います。大きな複眼が可愛らしい。頭上ではサンコウチョウが盛んに鳴いています。

 前の記事で、翅の青色は色素色ではなく構造色と記しましたが、実はこの構造色というのは原理が非常に難しいのです。世界中でたくさんの論文が書かれています。
モルフォチョウ構造色の基本原理:規則性と不規則性の共存」東京理科大学 理工学部 物理学科 吉岡研究室:いや難しいです。染色とか印刷をやっていたので色素色には非常に詳しいのですが。

 歴戦を戦い抜いてきた猛者。後翅がもうボロボロですね。オオムラサキの様に地上に下りることはないので、ニホンカナヘビに襲われたということではないと思いますが。

 素晴らしい生命力。

 左がオオミドリシジミ。右がハヤシミドリシジミ。後翅の橙色の部分の違いが分かると思います。と書いたのですが、もしやと思い蝶の専門家に聞いてみました。撮影時間が11時なのと翅の色や文様から、アイノミドリシジミである蓋然性が高いということです。おそらくそうでしょう。なんとかミドリシジミとつく種は、同定が非常に難しいのです。細かく違いを説明しているサイトもありますが、細かすぎて逆に分からないほどです。

 陣馬平。目ぼしい昆虫はいません。暑すぎるのか蜘蛛の巣も少ない。ヤブ蚊もいません。煩いクロメマトイも少ない。ニイニイゼミが鳴き始めましたがわずかです。セミもあまりの暑さに地上に出てきていいのか迷っているのでしょうか。前回ムモンホソアシナガバチに刺された場所が赤くなりました。治る印ですが痛痒い。かさぶたになって見たら、なんと5箇所刺されていました。オーマイガー。

 山椒の葉に、シオヤアブ(塩屋虻)のオス。蝶や甲虫の天敵です。自分より大きな虫を捕らえることもあります。体液を吸うのです。人が襲われることは殆どありませんが、アブよけには、登山家に絶対の信頼を集めているキンカンの虫除けスプレーをおすすめします。

 樹液バーに訪れたオオスズメバチ。樹液がたっぷり出ているのと競争相手が少ないので、他の昆虫を蹴散らすようなことはありません。この後、突然飛び去って私は即座に逃げました。なにせ100m追いかけられたことがありますから。キイロスズメバチやチャイロスズメバチの方が遥かに凶暴で危険です。ネオニコの空中散布で昆虫が死滅した夏に樹液バーに来たら、チャイロスズメバチの大群に襲われたことがあります。車中にいたので無事でしたが、ウィンドウに大群が猛烈に体当たり。車外に出ていたら命はなかったでしょう。

 コムラサキ(小紫)。シソ目クマツヅラ科ムラサキシキブ属の落葉低木です。妻女山山系にはムラサキシキブ(紫式部)もありますが、コムラサキの方が多く見られます。コムラサキの方が紫の実をたくさんつけるので庭木にはおすすめです。コムラサキの実は鳥たちが好んで食べますが、人が食べても美味しくはありません。

 ウラナミアカシジミ(裏波赤小灰蝶)。幼虫の食樹は、クヌギ、コナラ、アベマキなど。成虫も、食樹のまわりをあまり離れない様です。他のシジミチョウでも何度も目撃しましたが、この個体もニジニジとゆっくりと360度回転するのです。調べましたが分かりませんでした。どういう理由なんでしょうね。近くに天敵がいないか確認するのでしょうか。

 ウラキンシジミ(裏金小灰蝶)。食樹はマルバアオダモ。いやあ初めて撮影しました。生息することも知りませんでした。感激です。地面のわずかな水分を吸っているのでしょうか。翅の表は暗褐色で非常に目立たないシジミチョウです。県によっては絶滅危惧種に指定されているところもあります。

 イチモンジチョウ(一文字蝶)。幼虫の食草は、スイカズラ、キンギンボクなど、スイカズラ科の植物。そういえば今年はまだスイカズラが咲いていません。ウツギもエゴノキもネジキも咲いていません。なんということでしょう~。いずれも6月上旬に咲く花です。

 戊辰戦争以降の戦没者を祀る妻女山松代招魂社。老朽化で瓦が落ちそうで危険なので囲われています。奉賛会とか地元で管理していますが、維持費を捻出するのは大変だと思います。神社なので税金をつぎ込むことはできません。非常に重要な歴史的神社なのでクラウドファウンディングで資金を募るとか考えないといけないでしょう。木鼻の唐獅子は韓国人の窃盗団によって持ち去られ戻っていません。松代は大本営がありました。小中の同級生には、帰国しなかった在日の家族もたくさんいました。家に招かれて遊びにも行きました。差別はなかったですね。当時は親も言わなかったので在日とも知りませんでした。日本人も徴用されていましたから互いに苦汁をなめて支え合ったのでしょう。窃盗はそんな歴史を知らない馬鹿共の仕業でしょう。

 妻女山展望台の四阿から見る茶臼山と右後に虫倉山。いずれも拙書で載せています。すっかり夏色の風景。本を出版する前は、取材撮影で昼を挟んで5時間ぐらい樹液バーにいたのですが、さすがにもう無理です。撮影は午前中の3時間がやっと。熱中症で死んじゃいますよ。温泉へ行ってビール飲んで昼食後シエスタ。昔、数ヶ月居候していたアマゾンの人達の様な生活をしています。
 アウトドアや山登りなどでの熱中症。しかし、水分補給や塩分補給だけでは駄目なんです。スポーツドリンクやジェルでも駄目。ミネラル補給も必要。最も効果的なのは、生味噌。味噌きゅうりを持参すべき。痙攣がピタリとおさまる。経験で何度も生味噌で救われています。酷い時は大さじ一杯ぐらいの生味噌を口に含んで水をごくごく飲んで流し込むと、マジックの様に熱性痙攣が収まります。これを広めて欲しい。
アマゾンひとり旅:200日の南米アマゾン、アンデス一人旅の記録。新婚旅行もアマゾンでした。

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本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。

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4 コメント

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すれ違い (かたくり)
2022-07-04 07:47:05
記事を読んで私も妻女山のゼフィルスを撮影したくなって2日に出かけました。
8時前には妻女山(斎場山)山頂についてそこで柏の葉を揺らしてみたりしたのですが出会えず。

その後薬師山まで足を運んでイノシシのヌタ場周辺でゼフィルスの飛翔を何度か見ましたが下に止まらず数も少なくあきらめて、
貝母の群生地まで出かけました。
遠くからチェンソーらしき音が聞こえましたがあれはキッズさんの作業の音でしたか?
ここでもゼフィルスに出会えずあきらめて帰りました。

昨日は白馬の方に出向いて、アサマシジミ、ジョウザンミドリシジミを撮影できてやっと少し気が晴れました。
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残念でした (モリモリキッズ)
2022-07-04 09:13:55
その日は雲が多かったので、ブログ制作とアップをしていました。
やはり湿度が高いと下に来ませんね。
晴れていたら、林道倉科坂線を歩いたほうが出会えるかも知れません

チェーンソーは、たぶん堂平大塚古墳で倒木の処理をKさんがやられていたのでしょう。
大雨が降ると、あちこちで倒木や落枝が起きて大変です。
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ゼフィルス (かたくり)
2023-07-08 16:57:29
必ずしも卍の時間が図鑑道理ではないですが、アイノミドリシジミではないように思います。
私の図鑑では飛翔は6-9時と書かれていますが日照の出る時間にも左右されるのでそれが遅ければ遅れますがそれでも10時を過ぎると激減します。メスアカミドリシジミではないでしょうか?
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Unknown (モリモリキッズ)
2023-07-08 18:35:48
私には分かりませんねえ。
撮影は、この記事より後の7月8日の午前11時19分で、陣場平の下の入り口近くの林道です。
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