貧乏神髄
2007年10月29日 | 本
川上卓也著 WAVE出版 2002年
『貧乏するなら田舎が良いなあ。せっかく会社を辞めたのだから、思いっきり異なる環境に身を置きたいものだ。~ (略) ~見つかった物件というのが、すでに誰にも貸されていなかった貧乏長屋。よく見れば心なしかその全体は傾いているし、障子戸は骨が折れている。天井からは蜘蛛の巣が幾重にも垂れ下がり、壁はひび割れ崩れていて、畳はボロボロなの勿論、膨らんだり歪んだりしていました。室内を素足で歩けるようになるまでは二日を要し、床が抜けては驚き、厠を覗けば絶叫し、水の張られたままの風呂には大小各種の昆虫が溺死状態で~ (略) ~。それだけに、なんとか寝転がれる程度に掃除が進み、酒瓶をラッパ呑みしながら寝袋にくるまって過ごしたはじめての夜は、胸がいっぱいになりました。しかしまあ、なんでこんなボロボロの家に住む気になったかと言えば、都会暮らしでは得ることの出来なかった陽当たりに惹かれてのことなのでした。貧乏長屋は南向きに建てられていて、車一台が通るのもやっとこという道を挟んだ先には、畑と田んぼが広がっていました。』
川上卓也さんのHP 「耐乏PressJapan」
『貧乏するなら田舎が良いなあ。せっかく会社を辞めたのだから、思いっきり異なる環境に身を置きたいものだ。~ (略) ~見つかった物件というのが、すでに誰にも貸されていなかった貧乏長屋。よく見れば心なしかその全体は傾いているし、障子戸は骨が折れている。天井からは蜘蛛の巣が幾重にも垂れ下がり、壁はひび割れ崩れていて、畳はボロボロなの勿論、膨らんだり歪んだりしていました。室内を素足で歩けるようになるまでは二日を要し、床が抜けては驚き、厠を覗けば絶叫し、水の張られたままの風呂には大小各種の昆虫が溺死状態で~ (略) ~。それだけに、なんとか寝転がれる程度に掃除が進み、酒瓶をラッパ呑みしながら寝袋にくるまって過ごしたはじめての夜は、胸がいっぱいになりました。しかしまあ、なんでこんなボロボロの家に住む気になったかと言えば、都会暮らしでは得ることの出来なかった陽当たりに惹かれてのことなのでした。貧乏長屋は南向きに建てられていて、車一台が通るのもやっとこという道を挟んだ先には、畑と田んぼが広がっていました。』
川上卓也さんのHP 「耐乏PressJapan」